第1回ヒカクテキ古典部「今昔物語」報告

第1回ヒカクテキ古典部「今昔物語」報告

 

519日(日曜日)午後7時半~9

「今昔物語」

 

私の選んだ「巻2741話 高陽川狐変女乗馬尻語」と、Nさんの選んだ「羅生門」の2つをやる予定でしたが、時間の関係で「羅生門」は次回(77日)になりました。

 

まず最初に、簡単に「今昔物語」の説明をしました。

 

 

平安後期に書かれた「今昔物語」は、『日本霊異記』『三宝絵』『本朝法華験記』などをもとにして、日本、インド、中国の説話が全31巻にまとめられた説話集
8巻、18巻、21巻は欠落。

 

正確な執筆年代や、作者、題名もは不明。

説話の全てが「今は昔」と書き出されているため、「今昔物語」と呼ばれている。

鎌倉時代の説話集「宇治拾遺物語」など、後の説話集に大きな影響を与えた。

 

明治以降、武者小路実篤や菊池寛、新田次郎など、多くの小説家にも影響を与えたが、特に芥川龍之介「今昔物語」を題材に、多くの作品を残している

特に有名なのは、「鼻」「羅生門」などである。

 

 

ここからは、原文と訳文を対比させながら、具体的なイメージをもって理解してもらえるように写真や地図、画像などを見ながら皆で読みました。

 

私にとって「高陽川狐変女乗馬尻語」は、子供の頃読んで印象に残ったお話です。

狐が人をだますという不思議と、最後には人間に酷い目にあわされる狐が、なぜ何度も少女に化けてでてくるのかといえば、ただただ「人間のように馬に乗ってみたい」という好奇心と願望からきているということに、子供心に深く共感したのを覚えています。

 

そりゃあ乗ってみたいだろうなあ、自分で走るのと走る馬に乗るのはドキドキ感が違うし、目線が高くなって晴れ晴れと気持ちがいいし。

自分が動物園のポニーに乗った時のことを思い出して、頷いたのでした。

 

少女に化けた狐は、高陽川のほとりで京に向かう人を待って、馬の後ろに乗せてもらってはしばらくたつと飛び降りて狐に戻って逃げる、という悪戯を繰り返していました。

それが噂になって、滝口の武士の中の一人の若侍が、捕まえにいきます。

 

少女を馬の後ろに乗せて、縄で鞍にしばりつけ、驚いた少女が訳を問うと「お前を今夜抱いて寝ようと思うから逃げられないようにした」と今なら警察案件のとんでもないことを答えます。

いつものように、飛び降りて逃げられない狐は、行く手に牛車の行列を出現させて若侍をぐるっと遠回りさせ、まやかしの土御門で馬を降りさせ、まやかしの従者や同僚たちを出現させて、まんまと縄を解かせて逃げおおせます。

若侍は、一瞬で全てがかき消え、気が付くと真っ暗な闇の中にひとりポツンと立っていました。

そして、実はその場所は、帰って来たと思っていた内裏からは遥かに遠くの鳥部野(墓場)だったのです。

 

まんまと騙された若侍は、しばらくは体調を崩して寝込みますが、同僚にばかにされて再度リベンジすることにします。

 

今度は、用意万端。屈強な従者を沢山つれて、馬ででかけます。

今度であった少女は、前の少女とは違う顔をしていました。

同じように馬の後ろに乗せ、また縄で鞍に縛り付け、従者に松明を持たせて、あたりに気を張って歩いていくと、今度は本当の内裏に到着しました。

でてきた同僚たちに、誇らしげに「捕まえたぞ」と言います。

手ひどく扱われて人間の姿を保てなくなった狐にさんざん皆で矢を射かけ、松明で毛がなくなるまで体を焼き、「もうこんなことはするな」と言って、命までは取らずに逃がします。

狐は息も絶え絶えの様子で、なんとか逃げていきます。

 

ちょっと、やりすぎな感じです。

でも、平安の昔は、怪異と隣り合わせに人々が存在した世界です。

それは、帝のおわす内裏の中でさえ例外でなく、様々な怪異が起こったという話があります。

ましてや、高陽川のある平安京の西側は、都でありながら邸宅を構えていた貴族が次々と東へ逃げ出し、水害も起こり、すっかり荒れ果てた土地になっていました。

そこに出る狐、少女に化ける狐は、恐ろしく、また懲らしめるべき腹立たしいものに思えたのでしょう。

 

それから10日程して、若侍は更にもう一度狐に会いにいきます。

最初に騙された時は、意気消沈して、
「リベンジがならなかったら同僚に合わせる顔がないから、職場にはもういかずにずっと家に引きこもって居よう」
とか言っていたくせに、今はすっかり調子に乗っています。

 

高陽川で、あの少女に会いますが、すっかり様子が変わって痛々しい姿で立っています。

調子に乗っている若侍は、「おい、馬の後ろに乗れよ!お嬢ちゃん」なんて、いい気になってからかいます。

少女は「乗りたいけれど、松明で焼かれたのが耐えられないほど辛かったから・・・」としょんぼりと消えます。

 

可哀そうとしかいえないです。

でも、まだ本当は馬には乗りたいと口にするところが、せつないです。

 

説話の最後はこんな風に終わります。

昔から、狐が人に化けるのはよくあることだが、この狐は本当に上手く人を騙して、鳥部野まで連れて行った。

それなのに、なぜ二回目の時には、だますことをしなかったのか。

人の気構えがちゃんとしていたので、狐も騙すことができなかったのだろう。

 

本当にそうだろうか?

と私は思います。

 

一回目と二回目の少女は顔が違います。

一回目に鞍に縛り付けられたのに、二回目も警戒心無く、やすやすとまた縛り付けられています。

そして、今度は牛車をだしたり、道を間違えさせたりしないで、滝口の詰め所まで連れていかれてしまいます。

一回目の狐のまやかしで、武士の同僚たちが狐に矢を射かけようと構えたところからも、もし本当に連れていかれたら自分がどんな目に合うのか、狐には分かっていたはずです。

 

これらのことから、私は一回目と二回目の狐は違う狐なのではないかと思います。

 

最初の狐はお姉さん、美人で頭の良いお姉さん狐は、人を騙すのも上手にできます。

お姉さん狐は、家に帰って妹にこう話をします。

「今日は本当に面白かったわ。いつもより、ずっとながいこと馬にも乗ったし、人間を騙して墓場に置き去りにしてやった。あの人間の驚いた顔ったら(笑)」

いつもお姉さんが馬に乗った話を聞いて、羨ましく思っていた妹狐は、とうとう我慢できなくなって、自分も高陽川にでかけていきます。

でも、なんとか少女に化けることはできても、人間のことを良く知らず、騙す方法も持たない妹狐は、姉の分までやったことにされて、酷い目に合う羽目になってしまったのでした。

 

あれだけ酷い目にあった妹狐は、それでもまだ馬に乗りたいという未練がありました。

だからまた高陽川に行ってみました。

でも、またあの若侍に会って、今度はさすがに「怖い目に合うから、もう乗れないな」と諦めるのでした。

 

ああ、可哀そう。

 

と言ったところで、Nさん「僕は違う解釈」と。

狐は、若侍のことが好きになっちゃった。だから、2回も会いにいって、今度は騙せなかった」

 

あ~!

それは思いつかなかった!

そんな解釈もありかもね。

「今夜はお前を抱いて寝るぞ」とか言われちゃってたしねえ。

 

Nさん
「僕はすぐにそんなこと考えちゃう。でも、きっとKくんも同じこと考えたと思う」
と言いましたが、Kさんはまた違うみたいでした。

 

Kさん
「僕だったら、女に化けてこられるより、狐のままで来てくれた方がいい。可愛いから。そのままだったら、抱いて連れて行く」

(当日見ていただいた数枚の子供の狐の写真が、とんでもなく可愛いものだったのです。ここには使えませんが)

 

綺麗な少女より、可愛い動物が勝ち!

さすがです。

 

最後に、皆さんに短いマンガを読んでいただきました。

狐が一緒に走りたくて自転車に化けるお話。

現代の説話集と言ってもいいようなコミックスからの抜粋です。

「いつもきみのそばに」(みつつぐ作)の中の「狐と自転車」

動物の不思議な可愛い怪異談を25話描いたもので、とっても面白いので、良かったら読んでみてください。

 

まあ、そんなこんなで、なんとなく、終了です。

私が震え上がったのは、初めていらしてくださったIさんが、ちょうど授業で「今昔物語」を教えていらっしゃるとのこと。

こんな適当な内容薄いことで申し訳なかったです。

今度、機会があったら、お話し聞かせていただけたら嬉しいです。

 

次は、ちょっと時間をおいて、77日七夕様にやります。

Nさんが、「今昔物語の羅生門」と「芥川龍之介の羅生門」を比較しながら、お話しくださることになっています。

楽しみ。

 

皆で、次までに芥川の「羅生門」を、読んでいくことになりました。

 

ではでは、こんなゆるゆるな感じで始まりました「ヒカクテキ古典」に、どうぞよろしかったらご参加ください。

最初から、4名も参加があって、とってもとっても嬉しく存じます。

当日のとは違いますが、おまけの子供の狐の写真です。
こんな可愛いの、馬に乗せてやればいいじゃんね?

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<文責 ナンブ>

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