第12回ヒカクテキ読書会「本心」報告前編

526日(日曜日)午後7時半より

『本心』平野啓一郎

 

 

Hさん

今日は、平野啓一郎さんの「本心」です。

皆さんにまた長編をすすめてしまって、大変だったんじゃないかと思いますが、まずは感想を一通り聞かせていただければと思います。

 

Saさん

長編だったけれども、面白く読みました。私も段々と平野啓一郎さんファンになってきつつあります。

それで、これ、近未来の2040年くらいの話ですよね、なんか段々日本が今よりももっと悲しいことになっていて、辛いなと思ったり、だけど、少し明るい未来もみえるところもあって、なんか面白かったです。

 

Haさん

3時間くらいでたぶん読めた気がします。率直に言うと、今まで重鎮の方々の文章が続いたじゃないですか。言葉のなんていうか・・・人生経験がめちゃ暗い方で豊かな。

だから、若い竹のような、みずみずしいというか、粗削りというか、わか~い感じがとてもして、読みやすいというか先に進んでも「なんだっけそれ」って戻らなくて済んで、若いというのはこういうことだな~と。これからがある方なんだなと思いました。

 

Kさん

自分もかなり面白く読んだんですけど、自分の場合、主人公と年齢が近いんですよ。1歳差なもんで。

で、読んでいると主人公の良い子さ、ピュアさ、みたいなのがいいなとは思ったんですけど、同時に「こんなにピュアなままんまで29歳になれるものかね」と思って。そういう意味では面白かったんですけど、ピュアやな~なんか。擦れてないんじゃないかなと。

擦れてないからこの主人公は色々考えますよね。ていうところも面白かったし、ほんとに近未来のことが、色々とこうなるだろうなと、格差とかね、絶対になるでしょうという感じです。

 

Nam(私です)

Haさんじゃないけど、最近はずっと古めのもの読んでたじゃない?太宰とかね。

そうなると、割と「最近のもの、最近のこと」を扱うと、どうしても複雑化してる。とっても。話の中とかテーマとかがね。だから、1人の男の転落とかではもう小説が成り立たなくて、とても中身が複雑化していて、色んな要素がどんなものでも入ってきてるなと。

Hさんから「VFでお母さんを作る話」と聞いていたけれど、想像とは全然違っていた。VFの扱いについても、私の思うものとはちょっと違ってたなあと思いながら読みました。

途中からお母さんのVFはどうでも良くなってるじゃん、と思いながら、ずっとその話かと思って読んでたら違うんだな~と。

 

Hさん

違うんだよね~。

 

Nam

良かったなというところをあげます。

 お母さんに看取ってもらう吉川先生が最後の最後に、お母さんのVFに向かって「恋をしてた」というところがあるでしょ?「やっとあの世で本当のあなたに会えますね」っていって亡くなるっていう。

これ、すごく分かりやすくいい話、いい話だな~と。

 

私は「そうだよそうだよ、これなんだよ、VFって」とすごく思った。この吉川先生が捉えているこのお母さん像、これこそがVFだよと、私は思った。こういう関係性でいいんだよ、と思った。もうストレートに、っていうか、単純にね。

相手がなんであろうと、その間に会話が成り立って、なんらかのものを自分が与えられ、っていう関係性の中で、当然恋することもあるでしょう、いいじゃない?と思って読みました。

 

あと、なんか、最後が『スズメ』っていうのが、ちょっといいなと思った。

可愛いスズメで終わるじゃん?一羽のスズメが飛んでいって、同じスズメかどうかは分からないけど、二羽で戻ってきて。綿のように丸くなってさ、スズメが、ああいいなあ~と。

  

あと、面白かったのは、朔也が「宇宙と一体化する」っていうアプリを体験する時に、色んな歴史がめまぐるしく動いて、「京都の鴨川で牛車が動いてて」とか、そういうピックアップの仕方が、ふんふんと思いながら読んだ。平野さんがピックアップしてる訳なんだけど、そういうのって、人それぞれだから。その人が思う「人間の歴史のトピックス」っていうものがあると思う。

 

私はこれは途中まで「死」について書いているんだと思って、裏表紙見たら「命の意味」って書いてあったから、「生きる」って方なの?

私は「死」の意味について書いてあるんだと思って読んでた。

たぶん、平野さんの「死生観」みたいなものがコレなんだろうな~と思って。

 

Hさん

さっき  Namさんが言ってたVFとの関係について、この本の中にも書いてあるんだけど、平野さん自身もこうおっしゃっていました。

「何か自分が持ってないものとか、自分に欠落しているものとかを、代わりのもので埋め合わせをするっていうことは、決して本当のものを持ってる人と比べて、劣るものではない。最初から本物を持っている人が優位で、代替品というか、埋め合わせのものが序列的に劣っているということはないんじゃないか。持っている人の方が優位だというのは、傲慢な考え方なんじゃないか」

 

だから、私たちも何もかもを持ってる訳じゃないので、持ってない部分を何か他のものとか似てるものとかで埋め合わせて生きていく部分があると思うけど、それをすごく肯定的に捉えている平野さんの思想的な部分があるのかなと思いました。

だから、さっきNamさんが言った吉川先生とお母さんのVFの関係は真実というか、平野さんの考えているところに近いのかなと思って聞いてました。

 

確かにまずはひとつ、2040年という設定をいつも念頭に置いておかないと、色んなエピソードとか言葉に驚くことがあったかもしれないけど、いつも平野さんは自分の作品を出版してしばらくしてから、「自作解題」じゃないけど、その作品のテーマを一言でいったらということをされていて、この「本心」に関しては「愛する人の他者性」っていうのが、一言でいったらテーマだとおっしゃっていて、「なるほど」と私は思ったんですけど、朔也とお母さんは貧しい母子家庭なんで、本当に二人だけの、沢山の分人を持っていないんですよね。お母さんとの関係が濃密で。友人らしき人と言えば岸谷くらいで、その岸谷ともオンラインであったりとかで、すごく人間関係が少ないんですよね。

だから29歳という年齢からしたら「え?」と思うかもしれないけど、母親との関係が濃密で、お互いに愛し合っていて、だけど、これだけ愛していてもどうして母が「自由死」を願ったかが、やはり答えは作品の終わりまで来てもでなかったというところで、「愛する人の他者性」かなあと、ひとつは思ったんですけど、三好さんの他者性とか色々あると思うですけど、イフィーの他者性か、まあ、同じように友人や好きな人として愛していたと思うのであると思うですけど、まあ、そういう風に(平野さんは)おっしゃっていました。

 

で、Kさんが言った「29歳でこんなにピュアなのがあるのかな」ということですが、これは私なりの考えなんですが、すごく人間関係が少なくて、母親と二人だけでひっそりと社会の片隅で暮らしていたら、そうするとピュアというよりもこういう関係性からこういう人がこれから増えるかもしれないのかなと。

 

Kさん

いやあ、そうですねえ、親離れできてない子、多いですもんね。

 

Hさん

親離れもできていないし、親離れができない環境に置かれて、その環境から抜け出せないまま、それは自己責任では決してないと思うんですけど、社会だったり時代だったりの色んな影響を受けて、親離れができないまま29歳になってしまうという、そういう感じもあったのかなあと思ったりしました。

 

じゃあ、次にですね、みなさんが「面白かった」のはどの辺が面白かったのかをちょっと聞いてみたいなと思います。

 

私は、今回読んでみて、今までも3回くらい読んでいたんですけど、エピソードで、藤原さんという作家の書いた母が愛読していた小説の内容がずっとでてきましたよね。そのサプライズ番組みたいな話で、最後は男性の方が交通事故で番組の終了を迎えなくて死んでしまったという、これはなんの意味があって小説をこんな内容にされたのかなって。

意味はないかも知れないけど、どういう意図だったのかなあって。そこに前半ではちょっとひっかかって、ようするにそういう今の時代をあらわしてるのかな?

フェイクなのか違うのか、騙されているのかいないのか、ようするに真実が何か分からないという・・・そういうことが・・・言いたかったのか・・・。

 

Saさん

そのエピソードは、皆お笑い芸人を俯瞰して見て笑ってる訳だよね、騙されていることを。リアルアバターとして、朔也さんも、メロンを買いに走らされてるというエピソードがあって、結局、高みにいて見ている人と見られてる人、その格差みたいなものの象徴なのかなあって、ちょっと思ったりはしました。

 

Hさん

なるほどねえ・・・確かに。

例えば、ドッキリとかサプライズとかで、結局、騙されている中にいる人と、騙されていることを仕掛けを知ってて高見の見物をして笑っている人っていう風だよね。

なるほど、そこでも二分されているというか、分断されている訳だよね。

何かでおっしゃっていたんですが、人に対して自分はサプライズするのが自分はあんまり好きじゃないということが書いてあったのを思い出したんですけど・・・。

 

ここで、平野さんが体験したサプライズに関するエピソードが紹介されました。

レストランで友人達と食事をしていると、隣の席でバースデーケーキが運ばれてくるサプライズが行われた。実はたまたま友人達の中にも当日が誕生日の人がいて、どう勘違いしたのかサプライズを期待している様子がありありと見てとられたが、そんな用意はしてなくて、当然いつまでたってもケーキは来ないので、場がすごく気まずい雰囲気になったというお話でした。

 

もしかしたらそういう思い出から、平野さんのことだから、何か抽出して、サプライズに対してすごく考えられたことがあったの・・・かもしれない。サプライズとか驚かすとか・・・驚かすが過ぎると騙すということになるのかもしれないし。

  

Nam

これに「愛する人の他者性」ってことが最後の方に繰り返し出てくるじゃない?

不思議なのは、高校の時に女の子を庇って座り込みのストライキをする英雄的な男の子がいたら、朔也は自分も座るじゃない?

結局、その男の子はバックレて、ひとり残って座り込んでいたら、自分で退学することになっちゃって・・・。そして、後になって、その女の子に対して「愛していた」と考えるようになるんだよね。それが唐突で違和感があって、彼はその後も何度も思い返してはそう思うんだけど、それがちょっとわかんなくて、大して接点もない相手にそう思うって・・・。

「愛する人の他者性」とか言ってるけど、そもそも彼にとって「愛」ってどういう位置づけなの?とか思っちゃうの。

 

Hさん

名付けようもない感情を愛と呼ぶのだろうか?というのが出てきてたと思うんだけど、それもまたこの青年の幼さを表しているのかと思ったけど、どうでしょう?

 

Kさん

結局、「何も意味なくやっても、何も意味ないとは思えない感じ」・・・ありますよね?

そういうこと考え始めると、他に言いようが無かった・・・とは思いますが・・・。

これからの人生の中で、「あれは愛ではなかった」と言い始めそうな気がする。この人は。

 

Nam

「あれはやっぱり勘違いだった」(笑)

じゃあ、何のために俺高校やめちゃったんだ・・・って話にならない?(笑)

 

ここで「愛」って言ったことを、彼は何度も問うんだよ、自分の中で。で、「彼女への愛」っていうものが、なんか変化してくる・・・違う「人への思い」とかに。

だから、最初は接点もほとんどない彼女のことを「愛していた」とか言い出した時は、どうしちゃったのと思ったけれども、なんだろう、どうも彼の中ではそれが発酵してくる。

 

Hさん

平野さんの小説のひとつのテーマが、「アイデンティティー」とか「愛とはなにか」とかだとおしゃっているんだけど、「マチネの終わりに」でも、主人公の二人は二回しか会っていないから、私はそう唐突には感じなくて、どうして自分が座り込みをしたのかの理由がはっきりいえない・・・自分でも理由がはっきりしないとなると、「愛」って言葉にたどりついても私はそんなに不思議ではないんだけど、どうですか?

 

Kさん

最初の座り込みを始めたきっかけっていうのも、主人公発信じゃないじゃないですか。英雄的な・・・なんでしょうかね、英雄的って名付けていることから、なんなんでしょうかね、そういう人のようになりたかったのか・・・?

 

Hさん

英雄じゃなくて、「英雄的」っていってるから、皮肉っぽい意味合いで、英雄ではない・・・。

 

Nam

んー・・・私は別に皮肉と主人公がとっている感じはしない。

ちょっとね・・・なかなかこれ、一回でやるのは難しいと思うんだよね。

なんだろう・・・だから、女の子とほとんど接点がなくて、頼まれた訳でも望まれた訳でもないのに、英雄的な行動の男の子がでてきたら、なんだか自分も座り込んじゃう。

「彼女に対する愛」とか言ってるけど、彼にとって「愛」っていうのは、私が思うには「自分の中」なんだよ。「自分の中になにか生まれているなにか」だから普通は愛と言えば「相手がいてこそ」だし、「その人がいて、自分がいて」の関係性の中で生まれるものっていう感じがするんだけど、彼の場合はなんか違う気がする。愛というものの捉え方が。

 

Kさん

あー、「自分から他人への矢印一本で愛」って感じですよね。

 

Nam

そうそう、自分の中になにかがあって、その何かが生まれた原因がある・・・「原因がいる」、くらいの感じ。彼女に対して愛を迸らせてる訳でもなんでもなくて。ただ自分の中にあるっていう。

 

Kさん

そうですねえ・・・。

 

Nam

で、これってさ。VFとの関係、それも、すごくこれに近い。

「愛するお母さん」のVFを作るんだけど、でも、二人の関係性ってあくまで「自分」なんだよね。自分主体。で、相手から返ってくるものも、自分が学習させたものが返ってくるっていう関係。

「愛する人の他者性」っていうのは、別の人、藤原さんが言うんだけど。

彼にとっての「愛」っていうのは、相手を必要としない。だから、三好のことも好きなんだけど、彼女とどうにかなることは求めていない。でも、彼の三好に対する気持ちは、やっぱり「愛情」だろうと。

 

Haさん

そう、愛情なんだろうけど、こっちからは何もしないじゃないですか。向こうからもらうだけで、有難いって感じで。

 

Nam

だから、その関係性がね、人間とVF、もしくは、人間とAIの関係性にすごく似てるなあと。

 

Hさん

んー、そういう見方もある・・・確かに。

と思うと同時に、例えば、高校時代の同級生の女の子は、二回ぐらい、教室の出入りをする時に道を譲ってくれたり、ノートを貸して欲しいと言われて、求められたから貸して、同級生の女の子は自分しかもう借りる相手がいないのかもしれないとか、自分も求められるとしたらこの女の子からしかないのかもしれないとかいう場面があったんだけど、ちょっと別の見方をすると、相手からの報酬とかお返しとか報いを求めていないという風にもとれるのかなと。

特に三好さんは「指一本触れてほしくない」という強い願いがあった訳だから、それを護るというか、信頼をそこないたくないという意味でも、何も求めない愛・・・っていう見方もできるのかなっと。

 

Nam

私はね、ずーっと彼がとにかく一方通行、自分の中に生まれるものとの対話でやってきて、高校の時の女の子もそうだし、お母さん、作ったVFのお母さんともそうだし、三好ともそうだし、イフィーともそうなんだけど、最後の最後に、変わるんだよ、彼は。私的には。

最後の最後に、日本語がちょっと不自由な女の子と、実際に待ち合わせをして、話をして、自分の方から「こういうものがあるからやったらどう?」と一歩踏み込んで、学校を紹介する。っていう風に、対人関係の作り方が、最後の最後に変わってくるんだよ。

 

で、彼の中でもその時に、VFのお母さんはもう必要なくなっている。VFのお母さんが必要でなくなってきたのは、ひとつには三好とかイフィーがでてきたりして生身の人間との付き合いがでてきた時に、一回必要なくなってるんだけど、最後の最後に、お母さんと決別するじゃない?手を握ってくれたのは三好だけど。

で、最後にティリって女の子と関係性を築こうとしている。「彼は変わった」っていう形で終わっているなあ・・・と思って。

 

Hさん

それはそうだと思う。

 

Nam

で、そこにスズメがでてきて、可愛くていいな~と思って。

いいじゃん、ティリと仲良くしていけば!とか思って。

 

Hさん

この三好さんと、イフィーとの3人の関係がどうなるのかというハラハラ感が、私としてはすごく楽しめました。

 

Kさん

けっこうハラハラしましたよ、イフィーがいい子で良かったと思いました。

 

Haさん

ほんとう!?

ちょっと「ノルウェーの森」を思い出しながら読んでたんですよね。

他人な感じ。全然ピュア?それこそ、ピュアで、自分の感情の引き出しが少ない感じが私はしてて、ABCしかないみたいな。「好き」って言ったら、全部「愛情」!

・・・しかない!みたいな。

カテゴライズが三つ四つしかなくて、みたいな感じがしたので、三好さんとの関係も兄弟を見ているみたいな。姉妹・・・みたいな。感じで見ていて、全然ドキドキしなくって(笑)

で、最後にちょっと、明るくなったじゃないですか?

それがちょっと「変身」の最後みたいな感じがしたんですよね。一番最後に「しゅっ」っと。

(「変身」では)主人公が死んだ後に、お父さんとお母さんが「妹にも新しい彼氏を作らなくちゃね」みたいな、急に場面が最後で変わったのが、「変身」が変わったんですよね?あんな感じ?

お母さんが・・・消えた?後で、皆さんがおっしゃったみたいに、実際の対面による人間関係が一からできている感じ?「幼稚園を始めました!」みたいな?

三つしか無かったカテゴライズが、実は四つあったんだよ?・・・みたいな(笑)

「未熟」っていうのが、さっきおっしゃって、そうだなあ~っと。

全然、今までの読書会のどろどろした本たちと比べたら、みずみずしくて(笑)

 

Nam

でもさあ、これ、いうならさあ、ティリが言葉に不自由しててさ、自分の手助けを必要としている人間だったから・・・だよね?

だから彼は踏み出せたんだよね?

 

Haさん

そうだと思います。手助けを必要としている相手なら、何か出来るじゃないですか、自分も自信ないし。

座り込みもそうだし。自分よりも弱い立場の人には何か出来るけど、対等とか上の立場の人間には手出しできない。

手出ししないというか、何をしていいんだか分からないんだと思うんですよね。

ホントに、ピュアだな~っと(笑)

 

Saさん

あの、いいですか?

Hさんに聞いて、平野さんがでている本の番組を見た時に、「親が亡くなった時に、子供、小さな子は割と世間からフォローされるんだけど、大人はそれをされない」と言われてて、それがけっこう心に残っているんだけど。

朔也も親ひとり子ひとりで育ってきてて、すごい濃密な関係で、本当に、たぶんVFを作らないと生きていけないような関係だったんだろうなって思っていて、それが段々段々、なんか色んな人と、それこそイフィーのところで働くようになってからは、お母さんと話すことも忘れていた、みたいなところがあって、最後は特にティリのことを手助けするようになってきて、なんか・・・良かったなって思います。

 なんか段々、成長の物語でもあったのかなって。

 

Nam

金銭的なバックアップももうあるしね!

 

Saさん

そう、もうメロンのくだりが私は辛くて辛くて・・・。

 

Hさん

確かに、大人になったから悲しみに耐えられると決めつけることもなくて、大人でも、悲しいとは悲しい、それはあると。

 

Nam

大人の方が悲しいってこともあるかもだよね?むしろね?

子供は案外回復も早くって、なんにも状況が分からなかったりするけど、案外大人の方が悲しいってことも・・・場合によってはあるよね?

 

Hさん

ほんとこの朔也が、こうやって人間関係を少しずつ増やして、お金もたまって、それを使ってまた勉強しようとしてて、ほんと、自分のことのように、良かったな~って(笑)

良かった~って・・・思いましたよ。ほんとに。

 

Nam

だってさ、めちゃめちゃ不憫だもんね。

お母さん亡くなっただけで、ショック受けてるのに、自分の父親が誰だって話になったら「精子提供者」の子供だったっていうんでしょ?

で、自分のお母さんは女の人と二人で自分を育てるつもりだったのに、その女の人に逃げられて、いやおうなくひとりで子供を育てなきゃならなくなって、その子が自分だ!っていうんでしょ?

もう分かれば分かるほど、気持ちの持っていき処がないようなことが最後にでてくるじゃん。で、結局、お母さん不思議な人過ぎて・・・。

 

Hさん

でも、2040年には、例えばそういう風にして子供を作ったりとか、同じひとつの家に男女で住んでても友情のような名付けようのない、ただルームシェアしてる、お互いに好意を持っているみたいな、こういう人が増えてるのかな~、増えるのかもしれないというのは、なんとなく思いました。

ただ、Haさんがさっき言われた、「自分より弱い人には働きかけて、自分よりも優れていると思う人には働きかけることがない」っていうのが、なんかギクっとしました(笑)

言われてみれば朔也くんって、そうなのかなあ・・・うん。

 

Nam

なんかさあ、リアルアバターとかすごい面白くなかった?

面白いなあ、って思って読んだ。

 

Kさん

いやあ、そういう仕事、今後でてきそうですよね。

もうなんかすでに「レンタルなんでも」、みたいなのあるじゃないですか?

そういうので「自分を貸します」みたいなのやってる人はいますし。

考えてみたら、Uberとかもそうですよね。あれがもっと拡大するのは、全然あり得ると思います。

 

Nam

でもさ、物だけじゃなくて、「その人に成り代わる」訳でしょ?リアルアバターって。

だから、「感覚を共有する」ってことでしょ?

そこはまだ今無いよね。

だからさ、「感覚を他人と共有する」っていうのが、面白いと思う。発想として。

 

ここからは、脱線して「人間とAIの違いとは」とか、または「AIの未来は」みたいなちょっと怖い話になってしまって、Kさんのなかなかの慧眼が発揮されて面白かったりしたんですけど、ちょっと長くなるので割愛します。

 

Nam

私はこの中のVFの母との関係とかさ、安心感をもって読めて(笑)

この母のおとぼけ感、教えたことしか言わないしさ・・・なのに最後は「奇跡」が起こって、いなかったはずのお母さん、消えたはずのお母さんがなぜかまた傍に座って、自分の手を握ってくれるという・・・ものすごい美しい奇跡を体験して終わって良かったな・・・って。

 

Hさん

イフィーと朔也とどっちが好き?(笑)

 

Kさん

あー・・・イフィーです。

 

Nam

私は吉川先生が好き(笑)

 

Hさん

吉川先生もいたねえ・・・イフィーと吉川先生(笑)

 

Haさん

私はあの人が好きでした。病院から自分が昔いた場所に行ってもらう、最初のリアルアバターのお客さん。坂道大変でしょ?とか危ないですよ?とか、あの人いいひとじゃないですか。

自分が死ぬ前に最後に見たい・・・とかいうの、分かるな、とか思って。

普通の人?近い人?私たちの感覚と。

 

Hさん

私は、朔也!がいいです。

 

Saさん

私・・・あんまりいない。どっちもどっちかな、う~ん・・・作家の先生かな・・・。藤原さん。

 

Hさん

じゃあね、三好さんとティリだったら?ごめんね、愚問ばっかりで。

 

Kさん

えー!ティリほとんど出てきてないけど(笑)・・・でも、ティリ割と好きです。

 

Haさん

可愛い、安心するのはティリかな。

 

Saさん

でも、三好さんは良い人。

 

Hさん

良い人だよね?頑張ってるというか、生きてますよ。

 

Haさん

うん、生きてるって感じがする。

 

Nam

でもさ、三好さんもティリもメンドクサくない?相手にするにはめちゃメンドクサイ。

三好さんはさ、地雷抱えてるし、ティリもなんだかさ、鬱屈があるよね?

 

Kさん

まだティリの方が楽かな、って感じします。

 

Hさん

そりゃあ三好さんの方が強いような感じはする。

 

Nam

わかんないよ?(笑)ティリも日本語ばんばんしゃべれるようになったらさ。

私が一番好きなのは、スズメかな。スズメめっちゃ可愛い。

 

Haさん

お皿が最後逆だったでしょ?なんでこのシーンがいるんだろ?とか思って。

 

Nam

ちょっとしたアクシデントで、微笑ましいシーンなんじゃない?

なんかさ、ちょっと親しくなるじゃん、そういうことがあると。

「ほら、違ってるよ~?」とかいって交換してさ。ちょっと距離縮まるじゃん?

「あ、それ私の」「あ、ごめんごめん」とか。

 

Haさん

お母さんのVFを連れてきた時に、あの女の人(野崎)が何か言いたそうな顔をするんですけど、言わないじゃないですか。あれってなんだったんだろうって、ずっとひっかかるんですよね。

解決してないですよね?

 

Hさん

父親のことを・・・朔也の知らないようなことを、言っといた方がいいのかな・・・みたいなことなのかな。

 

Kさん

結局、母のことを知ってるんですよね。情報を得てるから。それで、主人公の知らないことを知っちゃったっていう、結果なんでしょうね。

 

Haさん

回収されるのかなって思ったら、回収されてないので。

 

Kさん

でも、もう、何がでてきてもびっくりしないですけどね、秘密が多すぎて(笑)

野崎さんも割と好きでしたよ、私は。

 

Hさん

あー、ちょっとミステリアスな感じもあり・・・。

最初は野崎さんが何か重要な役割をになっていくのかなあ・・・と思ったけど、そこまではなく。

私はこの富田医院の富田先生、こういう人はあんまり好きじゃないなあ・・・という。

 

後編に続く

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です