カテゴリー: 読書会

  • 第6回ヒカクテキ古典部(鬼話詰め合わせ)のお誘い

    11月17日 日曜日 夜7時半より
    「鬼話詰め合わせ」

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    前回の「雨月物語」(吉備津の釜)の回を受けて、鬼です。

    吉備津の釜、橋姫、黒塚、道成寺、葵上、鉄輪、大江山の酒呑童子には触れたので、何にしようかなあ。

    と思っていたけど、「女の鬼ばかりだけど、男の鬼は?」という前回の疑問を受けて、とりあえず「雨月物語」の「青頭巾」には触れておこうかと。

    美しい上田秋成の文章を、おそらく部分的になるけどみなさんとまた味わおうと思います。

    そして、今昔物語からもうひとつ、男が鬼になる生々しい話をざっと。

    そして、まだまだあるよ!

    「雨月物語」「今昔物語」「長谷雄草紙」その他の、有名どころの鬼話をテーマテーマ別にパッケージ!

    時間がたぶんないので、ざざっと紹介。

    お楽しみに!(担当 南部)

    準備はなくてもいいんですけど、もしもお時間あったら、以下のリンクから「青頭巾」の現代文だけさっと読んでいただくとよろしいかと。


    日本古典文学摘集 雨月物語 巻之五 青頭巾 現代語訳

    上でもいいし、こちらでも、お好きな方で結構です。

    青頭巾(一):雨月物語

    青頭巾(二):雨月物語

    青頭巾(三):雨月物語

    青頭巾(四):雨月物語

    zoomはこちら↓

    https://us06web.zoom.us/j/6751269405?pwd=gQxriXgpkKDR2t9dhQsQkQYPzEdIeI.1&omn=81989881379

    ミーティング ID: 675 126 9405
    パスコード: hikakuteki

  • 第16回ヒカクテキ読書会「正欲」報告その1

    1013日日曜日夜7時半より

    朝井リョウ「正欲」

     

    今回は、選者のSaさんが、全体を回してくださいました。

    まずは各自の感想から。

    ただし、今回は、みなさん和やかにかつ活発に発言されて、同時にあいずちを打ったりなどされていたので、もっとがやがやした楽しい雰囲気でした。

     

    Nam(わたしです)

    これって結構ややこしいよ(笑)

    これって自分が、もしくはみんながね、どの立ち位置にいるかでたぶん違ってくるんだよ、この感想って。だからそれがバレちゃうよねって。だからどうしたもんかと(笑)それがひとつ。

     

    あと、田吉だっけ、佐々木の上司、あれが滅茶苦茶イヤな奴じゃん。正義を振りかざした体制側、大人数側の…。だけどね、これね、まあ、この朝井(リョウ)さんがどういう立ち位置にいて、どういうつもりで書いているのかは分からないけど、多数派だと言われている人たちが、いかに捻じれているか、っていうものを印象付ける形で書いてあるんだよね…。

    だから読んでると、「少数派がむしろ正で、多数派が負」、そう思うように書かれているから、うっかり引きずられそうになって、「少数派は単に水が好きだっただけなのに、こんな目に会っちゃって可哀そう」…って…思っちゃうんだけれども、これが、この人たちが、水が好きっていう設定であったから、こういう感想になるんであって、これが別のものを自分の欲望としている人たちであったとしたら、果たしてどうなるかな?と思った。

     

    例えば、水に性的欲望を感じるなんて大抵の人が聞いてもそんなに嫌悪感持たないじゃない?まあ、例えば私が一般人だとして…聞いてもむしろ爽やかな(笑)そんなに気持ち悪さを感じ難いんだけど、それが別のものだったら、果たしてこういう構造が成り立つのかな?と思うんだよ。

    例えば何か生き物のの四肢を切断するのが好きだとか、虫を殺すのが好きだとかとなった時に、じゃあそれは、人に迷惑をかけるかかけないかでいえば、別に大多数の人に迷惑をかけないと思うんだけれども、果たしてそういうものでしか性的な欲望を感じられないから世の中からはじき出されて孤独にさいなまれてその人が生きていたとして、果たして同情できるのか?

    と思ったね。これに関しては。

    ちょっとさ(笑)水が好きっていうのは、ちょっとズルくない?って思った。

    もっとさ、いっぱいあるでしょう!Queerな人たちは!(笑)

     

    でさ、本当に、多様化多様化って、いますごくテレビとかでも朝から言ってるけど、私は結構さ…ちょっと…そんなノンキに言ってるけど大丈夫?(笑)ってとこがあって、自分たちが大多数に立ってると思うからノンキに多様化多様化って、「あなたたちのことも受け入れましょう!」みたいな感じでやってるけど、潜在的な数って見えない訳だから、さあそんなことをやってて蓋を開けてみたら、自分たちが少数派になってる…って可能性だってあるんだよね。だから、甘い感じで「全ての人たちに自由と平等を!」ってやってると、ひっくり返される…かもしれないってことは考えてないのかしら?っていつも思う(笑)

     

    で、後は、この間ヨーロッパのある国から帰ってきた知人の話しによるとヨーロッパもカナダもポリコレの嵐で酷いんだよ…って。

    その人は現地で色々話を聞いて、日本に帰ってから色々と調べてびっくりしたらしくて、つまり、少数派の人たちに優先的に権利を与えすぎちゃって、逆転現象が起きている、差別がうまれてると。

    例えば少数派の人たちには優先的に仕事や高い賃金を保証しなければならない。じゃあ、多数派にはどうかといえば、それはない、それどころか、そのことに反対すると社会的に弾圧されたり仕事を失ったりする。もしくはそういうことに反対の立場を表明するだけで社会的に弾圧されちゃう。そういう逆の差別が生まれている。あまりに極端だ…と。

    他にも色々と聞いたんだけど、常々薄々は感じていたんだけど、そこまでいってしまっているのかと。

    だから、この本自体は、とっても…なんだろう、感化されやすい…「酷い目にあって酷い話よね…ちょっと意識変えなきゃね…」と思わせるようなものではあるけれども、でも、あまりにも含まれている問題が多すぎて、これだけで感化されるにはちょっと「危険な題材だな」と私は思ってます…っていう。

    長くなりました。

     

    Saさん

    今の話で思ったのが、もう一人でてくる一緒に逮捕された人。学校の先生。この人はきっと「水が好き」じゃないんだよね?

     

    Nam

    でも、湖の写真とかもいっぱい持ってたんだよね?

     

    Hさん、Njさん

    小児ポルノとかいっぱい持ってたんだよね。

     

    Saさん

    そう、で、この人だけ、背景が全然描かれてないじゃない?例えば、小児ポルノだと少数派がひどく攻撃される訳だよね。水はそんなに攻撃されないかもしれないけど、同じ少数派かもしれない人たちで。で、この人だけなんにも描かれてないのって、意図があるのかなって、ちょっと思ったりしました。

     

    Kさん

    私はこの人のデビューした時の「部活やめるってよ」を、中学の時に、図書室の先生から勧められて読んでみて挫折したんですよ。あんま合わねえわ、と思って。これが2冊目なんですけど、この作家で読むのが。

    なんか最初…やっぱり苦手な作家やな…って思って読んだせいか、登場人物みんなめんどくさいな、って思ってたんですよねえ…。

    なんか真面目というか…すごい自分の人生に真摯に向き合ってる感じがして、私が多人数側だからかもしれないですけど、そういう恋愛のなんとかかんとかって、本当に人生の「一要素」でしかないみたいな感じで思っちゃって、そんな生き辛さを感じるほどのもんなんかねえ…ってのは思ってて。

    この作品中にも出てきてましたけど、そういう「少数派である自分」みたいなのを拠り所にしているような感じもして、なんかしょうもないことで悩んでるんだな…ってことは思ったりしました。

     

    ただ、最初に読んだ時よりは、それなりに自分の「受け入れる幅」が広がってる感じがして、けっこう作品としては面白くも読めましたねえ…。

     

    でも、確かに「水に」っていうのは、ちょっと逃げた感じがしてて…っていうのと、もし身近にそういう人がいたらどう思うのかってことを考えた時に、結局それ以外の要素が重要にってなってくると思って、自分が他で好きな要素がある人とか、仲良くしたい人とかだったら、別に水に興奮しようと、もっとえぐい性癖があろうと、そんなにイヤに思わないと思うんですよ。

    ただ、普通に嫌いな人がそういう性癖をもっていたら「水に興奮するとか頭おかしいわ」って思っちゃうような気はしますね。

    だから、私にとっては、あまり刺さらなかったっていったらあれですけど、「題材の重みが違った」って感じがなんかしてますね。

     

    Nam

    まさに「立ち位置」だね。

     

    Kさん

    ですね。だから、「こういうのが大事な人もいるんだな」って感じで読みました。

     

    Nam

    ね、少数派の人が読んだらどうなのかな?っていうね。

     

    Kさん

    そうですね。でも、「こんなので理解されたくない」って思うんじゃないですか?

     

    Nam

    朝井さんはどういう立ち位置なんだろう?

     

    Kさん

    ホントに疑問投げかけるだけで終わった、って感じがするっていうか。解説にも書いてましたけど、けっこう読み手によって解釈がそれぞれっていうか、結論もださずに終わったというか。

     

    Nam

    なんか、本人(朝井リョウさん)が少数派な感じはしないよね?これ。

     

    Saさん

    朝井さん自身はたぶん少数派じゃないよ…メンドクサイ人なんだろうなとは思うんだけど(笑)

     

    Kさん

    それ、めっちゃそう思います(笑)

     

    Saさん

    けっこうテレビとかでてるじゃない?割とでてて、なんかすごいめんどくさそうな人だなって思う。

     

    Kさん

    色々考える人なんでしょうね?って感じ(笑)

     

    Hさん

    この「正しい欲」っていうタイトルがついているから、水なら人間の欲望としてオッケーだけど、人を殺してみたいとか、犬や猫を切断してみたいというのは、タイトルにある「正欲」には入るのか入らないのか分からないけど、人間の欲望のオッケーっていわれるのが、どこまでなのかっていうのも、タイトルにひとつ、少しあるのかなあ…とか思ったり。

    だから、最後にでてくる児童ポルノみたいな、あっちはもちろん法的にもバツだけれども、子供が水遊びしてるところを見て楽しむのはオッケーなのか…だから、その難しい…多様性を認めつつも、何でもいいのかって言ったら、何でも全てどんなことでも社会は受け入れていい訳じゃもちろんない…そこがひとつタイトルに何となく少しだけ込められてるのかなとか、ちょっと思ったりしたけど。

     

    Saさん

    確かに私も「正欲」ってタイトルは上手だなって。うまいタイトルかな、って思いました。

    で、「食欲と睡眠欲は裏切らない」って。

     

    Nam

    で、それを言った二人が関係性を持つことで、若干の安定と幸せを手に出来る。

    「いなくならないから」ってお互いに言って。

     

    Saさん

    「いなくならないから」っていうのが決め台詞。

     

    Kさん

    社会的には、結局、社会的に受け入れられる形の「変態」に貶められた訳じゃないですか、最終的には。でも、その中でも、理解者みたいなのがいたっていうのがひとつ「救い」かなとは思ってて。

    結局、「社会に受け入れられることと、仲間を見つけることはまた別」みたいな感じで…あんまり多様性とか議論しても…って思いましたけどね。

    正しいから水が好きになるとか、正しいから異性を好きになるとか、そういう話じゃなくて、生まれ持ったものと、それをどこで見せるかっていう話でしかないから…んー…結局、最終捕まったとはいえ、正しいというか、一番こう当たり障りのない…。

     

    Saさん

    世間が納得する?

     

    Kさん

    そうそう、そういう道を選べたんじゃないかな?っていうのは、思いますよね。

    理解者が得られただけ良かったんじゃない?っていうのは思いました。

     

    Saさん

    Njくんはどうですか?



    Njさん

    自分がどの立ち位置にいるのかが皆に分かってしまうのがどうかなあ、心配だなあ、っていうのと。

     

    みんな

    (笑)

     

    Njさん

    自分の性癖がバレるんじゃないかなあ、っていうのが(笑)それは冗談だけど。

    それで、僕はとても面白かった。ここまでは考えてなかったな、というか、多様性が片方でいわれてて、そこから漏れていくような人たち、そういう立場の人達もやっぱりいるんだな…っていう。

     

    で、どっちかっていうと僕なんかは、多様性多様性って口では言いながらも、ちょっと胡散臭い立場にいる。例えば学校現場とかでは、そういう立場に立っちゃってるんですよね。で、そこまで理解してないなって思うし、生徒たちもそこまで理解してないんだろうなって。そのへんの、何ていうか未熟さをちょっと教えてもらったかなっていうのはあるよね。

     

    で、一方で、今Namさんから聞いた話からは、そんなに多様性が大手をふってやりたい放題やってるのかなって、それも何かちょっと気持ち悪いなって。

    で、この小説に関しては、自分にとってはその辺を整理してくれたかなあ…っていうような感じはしますよね。

     

    後、「水」?水に興奮するっていうのは、あれはやっぱりKさんが言うように、逃げてるなと思うし、水に興奮するからっていって、登場人物が悩むじゃない?「生きていけない」みたいなさ…「そんな悩むこたねえだろう!」と思ったりした。

     

    Kさん

    お風呂場で遊べばいいのに!…ってずっと思ってた(笑)

     

    Njさん

    もうあの、「水」はちょっと比喩として「水」っていう、動物虐待とかだったらちょっともう書けないな、っていう、すごい嫌悪感持っちゃうので、なかなか入り込めないっていうところも、たぶん作者は分かってわざとやってるのかな、っていう…そこまで計算してるかな、っていう気もしないでもない。

     

    Saさん

    動物虐待とかだったら、そっちの方が強烈過ぎて、そっちに引きずられそうな気がするんだよね。水だから、他の色々なことを考えることが出来るような気もちょっとする。

     

    Njさん

    そうそう、水だから色々考えることが出来るんだけど、だけどあの主人公たちの絶望ぶりはちょっとちぐはぐになっちゃう、水でそこまでしなくていいだろうみたいな。まあ、でも自分は面白かった。

    なんだっけ、あの「桐島、部活やめるってよ」?あれは読んでないけど映画を見て、とても面白かったんだよ。あれ、桐島が全然でてこない。その周りの様子ばっかりでてきて。

     

    Saさん

    小説もそうだったよね?

     

    Njさん

    面白いなあって思って、これも映画になってるので、まあ、見てみたらいいかなあって。

    まあ、そんなところで、面白かったですよ。

     

    Hさん

    1つ思ったのは、夏月ってでてくるよね、あの人が心の中でつぶやいてるセリフが、親に対してだったり、向かいの雑貨店の人に対してだったり、同窓会でだったり、心の中でのつぶやきが沢山でてくるんだけど、夏月はマイノリティーの中にいるんだろうけど、けっこうマジョリティー側を、けっこうな上から目線で叩いてるなっていうか、見てるな、っていうのはすごく感じる。

     

    Kさん

    そう思った。

     

    Hさん

    例えば、同居している親に対しても、親は「今のこんな時代だから、別に結婚したり子供を生んだりすることだけが幸せじゃない」って考え改めて認めようとしているのに、それに対してもすごく揚げ足取るような感じで、ま、批判的というか…「未だに実家で生活してるんでしょ!あなたは」って言いたいんだよね。なんか、家を出てね、経済的にも精神的にも自立してなくって、親元で生活していて、ご飯も作ってもらってます…だけど家の手伝いをしてる風は、父親のことは「食器の後片付けもしない」とか言ってるけど、夏月もそんなにしてる風は小説の中では無くて、結構上から目線で…まあ、これを言うとね、私がマジョリティー側にいるからじゃない?って言われるかもしれないけど、そうじゃなくて普通に考えて、職場でもお向かいの雑貨店の近寄ってくる女の人を、口には出さないけど心の中では散々こき下ろしているよね?で、表面的には出さずに、最低限の受け答えだけして、察して欲しいみたいな…。

    最低限の受け答えで、私はあなたと仲良くしていないのよって、察して欲しいのかどうか分かんないけど、それじゃあ夏月のことも相手は分からないだろうなっていう気はすごく、夏月に関してはしたかなあ…って思って。

     

    だから、ちょっとその性癖が水で他の人とは違うってところで生き辛さや困難を抱えているとは思うんだけど、ややそこに溺れてる…って言ったらちょっと厳しい言い方になるかもしれないけど、少し感じたかな。

     

    自分がこんな年齢になってるから言えるのかもしれないけど、人生の全てが性癖ではないような気もするんだよね。仕事もあったり、趣味もあったり、何か他に、打ち込める、夢中になれる好きなものがあったりとか、恋愛関係じゃないけど、あの人とはちょっと仲良くなってみたいなとか思う人がいるかもしれないし、なんかそれ一色…だけで、人生っていうか生活を塗り固めてしまうのは逆にもったいないっていうか、ちょっと思いつめすぎ。

    当事者じゃないからいえるんだよ、っていわれるとちょっと何とも言えないけど、他の要素も人生にはあるのかな、ただ、二十代だから、そうなっても仕方がないのかな…分かるような気もするし…。

     

    Kさん

    分からん、私には分からん(笑)

     

    Njさん

    二十代(笑)

     

    Hさん

    逆に、水を見てると気持ちいいって訳だよね?それってそんなに違和感感じないっていうか、もしも近くにね?「噴水の水が好きなんだよねえ」とか「ホースで庭に水まきをするのが色んな線を描いて好きなんだよね、けっこう私、気持ちいいんだよね」っていう人がいたとしても、別に不思議はない。「へえ~そうだね」くらいに…。

    ま、それがね、異性には関心が全く無いって言われたとしても、この本が出版されたのと今の時代ではこの僅かの年数の間にまた時代がかなり変わってるせいもあるんだろうけど、そんなにびっくりして、邪魔者扱いじゃないけど異端者的な目を向ける気には全くなれない…かなと思った。

     

    例えばね、火を見て興奮するって人もやっぱりいるだろうし、他の物、例えば色んな…シャボン玉とか?木立の騒めいてる様子とか、何か…それで気持ちいいんだよねって言うのが、そんなに異端児かなって。

    ま、それにプラス、異性にそういう感情が全くわかないとか、人に対して全くない…むしろ嫌悪感を感じるところまでいくと、当事者としては生き辛かったり、困ったりはする…でしょうね…。

    嫌悪感が人に対してあるっていうところでは、そうなのかなあ。

     

    後ね、もうひとつ思ったのは、(ここからはプライベートな話なので詳しいところは割愛しますが、この本を読んで映画を見て、今まで言動が解せないと思っていた人のことを、自分とは違う感覚の人が存在するのだなと思って、解せないという感覚は無くなったというお話)

     

    Saさん

    やっぱり…水に逃げてる(笑)

     

    Nam

    みんな手厳しい(笑)

     

    Kさん

    でも、水にしたから最後のオチもついたような感じですよね?

     

    Haさん

    (遅れてきたので)最初の方の皆さんの話が聞けなくてすみません。

    これ、情報量が多すぎて、ものすごい頭の中が、眠りながら読んだりしてたので、取り合えず読みました!みたいな感じなんですけど、ちょっといっぱい質問があってですね、51日って何をした日ですか?

     

    みんな

    令和が始まった日。

     

    Haさん

    なるほど~。

    で、この初っ端?これは何ですかね?

    「ここまで読んだら、これを私に返してください。そのあとのことは、実際の声で、直接伝えようと思います。」

    これは、誰に対して誰が言ってるんですかね?

     

    Hさん

    佐々木が携帯に書いた文章を、夏月に渡したよね。

     

    Haさん

    じゃあ、これを書いたのは、捕まる前だったんですかね、ですよね?

    で、この佐々木さんの携帯に残っていた写真、この写真ってなんですかね?

    水で遊んでいた写真が残ってたって、最後の方で。

     

    Nam

    会社の知り合いの子供と、公園で会ってしまって、その子達に水鉄砲とかを与えて、遊んでるその子達を撮った写真じゃない?

     

    Haさん

    これ、なんで撮ったんでしょうね?

    子供の写真を撮る必要はなかったんじゃないかというか、むしろこの人たちは子供が入ったら嫌なんじゃないでしょうかね?

     

    Nam

    ひとりゲイでショタの人がいるじゃない?その人が写真を残りの二人に送って履歴を消してなかったから、芋づる式に残りの二人も捕まってるんだよね。だから、そのゲイの人が撮ったものなのか、本人が撮ったものなのか、そこは判然とはしてないんだけど。

     

    Haさん

    なるほど。

    なんか、皆さんと同じような意見かもしれない、ちょっと違うかもしれないんですけど、考え過ぎじゃない?って感じ。

    みんなが同じようにマイノリティーじゃないですかね?個性って言ったら個性なんですけど、持ってるじゃないですか…みんなそれぞれ。犯罪を起こしたらいけないけど、犯罪を犯さなければ、みんな持ってる話?心で何を思ったとしても、罪には問われないので、「火をつけたい」と思っても火をつけなければいい話で、罪には問われない。

    で、考え過ぎじゃない?その自分の考えをものすごく固執してるから生き難いだけで、あ、未熟なんだな…って気がすごくしていて。

    「子供じゃないんだから、もうちょっとしっかりしようよ」って思って。

     

    Kさん

    そう、それなんですよ。

     

    Hさん

    私もどっちかといったらそういう意見。

     

    Haさん

    右近さんが嫌な男だなって。たぶんあの奥さんと付き合ってる?

    で、あの男の子の末恐ろしさを。怖いなあって。

     

    Saさん、Hさん

    ユーチューバーの?

     

    Kさん

    最近の子供はさかしいから。

     

    Haさん

    そう、子供の残酷さ。

    「お父さんは分かってくれないけど、右近君は分かってくれるよね。お母さんどうも付き合ってるっぽいよね?」な感じを知ってる顔じゃないですかね?

     

    Nam

    右近君の手をぎゅっと握って、ちらっとお父さんを振り向くんだよね。

    にやっと笑って(笑)

     

    Haさん

    にやっと笑ってるんでしょ?

    右近君も付き合ってる感じで、奥さんの方ももう諦めてる感じでもう付き合ってます、みたいな…この検事さん?

    「あなたの人生の方がよっぽど大変よ?」って。

     

    みんな

    (笑)

     

    Haさん

    で、「ちょっとみんなしっかりしようよ!」って読みました(笑)

     

    Nam

    最後のとこでさ、もう自分のことでいっぱいいっぱいで、取り調べの時に奥さんの言葉がもうどんどん被ってきちゃうとこがさ(笑)

     

    Haさん

    そう、「あなたが一番大変よ?今」(笑)

    あなたは自分の考えに凝り固まってるし、これ、あなたは大変だけど、他の人はまだ軽いんじゃね?と思って。

    で、末恐ろしいあの息子。「この子どうなるんだろう?」って思って読みました。

     

    Nam

    これさ、横から申しわけないだけど、検事がさ、取り調べというか、参考に夏月の話を聞くところで、奥さんの言葉が被ってくる部分、ここめっちゃ上手いんだよ。

    あいだあいだに、夏月の言葉と奥さんの言葉がオーバーラップしてくる。そのオーバーラップのさせ方がとっても上手くって、例えば(該当部分を読み上げる)

    これさ、二人のセリフを不自然なくらいにばらけさせて並べているの。読んでて誰が言った言葉でどう繋がっているのか混乱するくらいにばらけさせている。ぷかぷか浮かべてるんだよね、二人の言葉を。

    そうすることで、この検事の頭の中の混乱っぷりをすごく表してて、すごい上手いなあって思った。

    だからもう、彼は話の脈絡なんか追えてないんだよ。検事は夏月の言葉を聞きながら、同時進行で好き勝手に頭の中に妻の言葉がリフレインしちゃうっていう。そういう状態を、これはこういう形で書いているなあ、上手だなあって。

     

    Njさん

    整然としてない。

    なんだっけ、ダイヤと八重子の会話、あの時も、周りの老人とか、自転車に乗った少年とか、あのへんも上手いっていうか。

     

    Nam

    ね~八重子好き?(笑)

     

    みんな

    (苦笑)

     

    Nam

    でもさ、八重子が突破口を開くじゃん?

     

    Njさん

    そうなんだよね。

     

    Nam

    だから、相いれない二人。そして片方は拒否ってる。理解されることを拒否ってる。っていう相手を、力技でこじ開けるじゃん?

    最後の最後に、めっちゃ力技じゃん。

    引かないんだよ、この人。

     

    Saさん

    普通だったら打ちのめされるよね。

     

    Nam

    そう、引かない(笑)

    で、引かないが故に最後に突破口切り開いちゃうんだよね。

    全く、お互い理解しあってないのに。

    もう(笑)「うん」とか言っちゃう。「今度話そうね」で思わず素直に「うん」とか頷いちゃったんだよね。

    だけど、唯一成功してるんだよね。彼女は。八重子。

     

    …八重子嫌いなんだよ、私(笑)

     

    Hさん

    前のね、八重子に「お願い」って言った先輩は駄目だったけどね。

     

    Nam

    そうそうそう。

    でも、八重子は構わずにさ。

     

    Saさん

    あれだけ拒否られたらね?打ちのめされそうなものなのに。

     

    Nam

    しかも、「理解したい」とか言いながら、理解する風も無く、自分のことばっかりバンバンバンバンぶつけてさ「あたしだって辛いのよ」って(笑)

     

    Hさん

    八重子もどちらかと言ったら、家に帰ったら両親が自分のことを理解してくれないとか、八重子もちょっと少数派っぽい立ち位置に書いてあるのかな。

     

    Kさん

    こいつはまだ…こいつって言っちゃった(笑)

    八重子はまだ、大学生だからいいんじゃないのかなって思いました。

    これでもう社会人とかなってて、その考え方だったらヤバそうだけど、大学生でこういう経験をしたんだったら、良い成長になるんじゃないかなあ、って思いました。

     

    Nam

    だけど、

    「また話そうね?私のことも繋がりにいれておいてね?」

    「うん」って頷いちゃうっていう、素直に。

    やっぱ勢いの勝ちだ!って思って(笑)

     

    Njさん

    読んでてちょっとこいつ嫌だなあ…とか思う人の描き方が上手、と思った。

    夏月の前の店にいる沙保里の描き方も、読んでてちょっと頭にくる(笑)

     

    Hさん

    読んでてちょっと嫌だよなあ~とは思うよね。沙保里はね。

     

    Njさん

    今の八重子の話もね、最初は「もうやめて~」ってダイヤに感情移入してしまってさ。ほんと、力技で押し切られたっていう(笑)

    で、なんか力技のあたりから、何か「そうかそうか、いいのかな?」って思ったりして。

    なんかでもそういうのが上手かなあって思って。

     

    Hさん

    あの、同窓会の後に夏月と良く連絡を取るようになった西山亜依子、割と子供を預かってっていう、愚痴をこぼす相手として夏月を選んで連絡を取るようになってきたとか、あの関係性もすごくその…この界隈では夏月みたいな人に色々言うのはすごく便利なというか、そういうところで重宝がられてるみたいな書き方をされてたけれども、なんかそういうところはリアルっていうか、有りがちな感じかなあって。

     

    Saさん

    確かに、「いそうな人たち」

     

    Hさん、Njさん

    「いそうな関係」っていうかね?

     

    Saさん

    同級生とか、亡くなっちゃった、ああいう人もいるよね?

     

    Hさん

    検事の奥さんが医者をずっと見てきたから、「医者だろうが検事だろうが、難しい仕事についてる人でも内臓はみんな一緒だし」、っていうくだりがあったじゃない?あれもなんか上手いなって思った。

    「検事ってことで、自分を敬遠する人が多いけど、君は自分を敬遠しなかったね?」って言ったら、「長年看護師として人を見てきたから、そういう難しい仕事をしている人でも、やっぱり一緒なんだよね~」っていうところが。

    人間観察眼は、面白いところがあるのかなあ~って、ちらっと思ったけどね。

     

    Nam

    上手いのは、最も正しく、正義の位置にあるこの検事、いわゆるクィア達を大上段から切り捨ててしまうようなこの検事が、奥さんが涙を流すことに興奮するっていう、ちょっと変態っていうさ(笑)

    でも、奥さんであるし、密室の中のことだから、誰にもバレないし、誰にも糾弾されないけれども、でもちょっとそういう「変態」染みた傾向を持っているっていう、こういう設定上手だって思う。

     

    Hさん

    涙も水だよね。

     

    Saさん

    そうね、そうか、繋がりがある。

     

    Nam

    で、それで完全な性的快感を得るっている、まあ、変態じゃん?

     

    Saさん

    誰でもね、結局。

    この2/3は多数派だけど、2/3×2/3は少数派になるっていうとこあったよね?それがけっこう頭に残ってて、多数派の多数派は少数派なんだって。

    だから、誰もが少数派的なものは持っていて、決してマジョリティーだけじゃないっていうね。

     

    Nam

    でもね、それは完全に多数派の意見なんだよ。

    多数派の立ち位置にいる人からの意見であって、これが少数派から言わせると、それは全然違うよっていうことになるんだよね。

    だってさ、その人たちっていうのは、「そこ」に立ってるんだよ。その狭いところに立ってるの、両足で。

    で、社会の中で、男女が恋愛して、結婚して、子供を持つ、っていうことが、社会の構造になってる。それが、社会の単位になってる。

    もちろん、今は独身の人も多くなってきて、昔ほどではないにしても、その構造からどうしてもはじき出されてしまう人からしたら、どうしようもない疎外感を感じるらしいよ?

    そこが全てじゃないじゃない?って言っても、人の中に出ていけば、こっち側の正義で疑いもせずに当然でしょって話をもってこられる(ここからちょっと長々とLGBTQの人の話とかしてしまっていますので、省略します)

    報告その2につづく→ 

  • 第17回ヒカクテキ読書会「雪沼とその周辺」のお誘い

    11月10日夜7時半より
    堀江敏幸「雪沼とその周辺」


    選者さんは「あまり盛り上がるようなものじゃないんだよね」と心配されていましたが、きっと大丈夫!
    「何ということも起きないけど、何かイイ」そうなので、みんなでしみじみ浸りましょう。

    それでは、「読んでも読まなくてものぞくだけでも大丈夫!飲み物片手に気楽にどうぞ」

    zoomはこちら↓

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  • 第五回ヒカクテキ古典部(雨月物語2)のお誘い

    10月27日午後7時半より
    上田秋成「雨月物語」より「吉備津の釜」後編

    前回は、上田秋成の一筋縄ではいかない凄みのある「序文」と、「吉備津の釜」前半をやりました。

    今回は、いよいよクライマックスの後編です。
    前回いらっしゃらなかった方は、ブログにあっぷしてあるヒカクテキ古典部予習用 吉備津の釜
    「青空文庫」などで、現代文を簡単に読んでいただけると当日楽かもしれません。

    もちろん、読まなくても大丈夫です。

    それでは、飲み物片手にお気軽にご参加お待ちしております。

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  • 第4回ヒカクテキ古典部(雨月物語)のお誘い

    9月29日午後7時半より
    上田秋成の「雨月物語」

    いずれ劣らぬ9篇の中から、どれか一つを選んでやります。

    単なる奇譚集と思うなかれ。
    上田秋成とは何者か?その謎に迫れる・・・かは全く未定です(たぶん無理)。

    決して大した教養がつくわけでもないけれども、いつも通りに、気楽に楽しみましょう!
    事前の準備は不要です、丸腰で安心していらしてくださいね。


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  • 第16回ヒカクテキ読書会「正欲」のお誘い

    9月はお休み。
    次回は10月13日夜7時半からですので、お間違えないように。

    朝井リョウの「正欲」です。
    若い作家の人のも読んでみようの回です。

    第34回柴田錬三郎賞受賞。
    第3回読者による文学賞受賞。
    2022年本屋大賞ノミネート。
    累計発行部数は2023年10月の段階で50万部を超えていたベストセラー。
    2023年には映画化されました。

    お楽しみに!

    読んでも読まなくても、飲み物片手にお気軽にのぞいてみてください。

    ↓zoomは以下です

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  • 第15回ヒカクテキ読書会「ドライブ・マイ・カー」報告

    好きな人は好き、わからない人はわからない。
    わからないから好きな人は何にひかれているのか知りたくても、なんだかやっぱりわからない。

    でも、表現は上手いとぐっとこぶしを握る部分もあって・・・。

    楽しく話してるけど、川の水に浮いてぷかぷか流れているような、そんな回でした。

    ただひとつ、村上春樹さん・・・もしくは、主人公の家福さんと言ってもいいですが、ちょっと女のことわかっていなさすぎじゃないですか?

    あと、家福という名前なのに、家庭が幸福じゃないところ、なんか意図があるんでしょうか?

    <文責 ナンブ>

  • 第3回ヒカクテキ古典部「平家物語」のお誘い

    8月25日(日曜日)午後7時半より

    「平家物語」より「敦盛」と、時間があったら「実盛」

    今後はなるべく月に一回やって参りますので、よろしくお願いいたします。

    とはいえ、まだまだフラフラの暗夜行路なのは変わらず。
    でも、みんなで読むときっと楽しい!

    「平家物語」には、お話しがとても沢山入っているので、まずは有名どころから。
    特に準備はいりませんので、丸腰でお気軽にどうぞ!

  • 第14回ヒカクテキ読書会「変身」報告その1

    721日 夜7時半より

    カフカ「変身」

    **************************************************************

     

    Nam(私です)

    最初に確認したいんだけど、これ翻訳がいっぱいあるみたいなんだけど、みんなは誰の翻訳で読みましたか?

    (高橋義孝、城山義彦、原田義人、丘沢静也とみんなバラバラでした)

    じゃあ、ひょとしたらちょっとずつみんなそれぞれ印象が違うかもしれないけど、それ前提でいきましょうか。

     

    Njさん

    久しぶりに読んで、なんか全然印象が違っていた。昔は人が起きたら毒虫に変わっているというところにポイントがあったんですけど、今回はむしろ周りの家族の反応の方がとても気になった。たぶん歳を取ったせいかな。みなさんも経験があると思うんだけど、自分の身の周りに老いた年寄りとか、段々体が自分のいうことをきかなくなったりとか、ちょっと自分が今そういう時期でもあって、まあそういうこととか、語弊があるかもしれないですけど、例えば自分の家の中に障がい者がいるとか、とても凶悪な息子がいるとか、もしもそういう人が読んだら全然比喩として読めちゃうだろうなあ・・・と思いましたね。

    後はなんか、妹の最後の「これはお兄さんじゃないわ!」っていうとこ、ぐっときたというか、新しい何かに入っていく・・・そういう印象でした。

     

    Saさん

    私が読んだ訳だと3章に分かれていて、1章目と2章目は一人称、グレゴールの視点で語られていて、3章ってほんとに虫になって最後には亡くなってしまう、死んでしまう、っていうのは三人称で書かれていたんですよ。

    確かに私も家族のことが、どちらかっていうと主人公よりも周りの家族の再生が書かれている本なのかなあ・・・って感じました。

    毒虫に変わったのは、比喩っていうか、Njくんも言ったように障がい者とか、寝たきりの年老いた両親とかを抱えた人たちにとっては、ちょっと身につまされる思いがするのかな・・・って思いながら読みました。

     

    Kさん

    自分も毒虫になるところしか知らなくて、今回初めて読んだんですけど、なんか思ってたのと違った・・・っていうのと、あんまり主人公にとって希望のある終わり方でなかったので、それが最終的に救われるのを期待していたので、結局虫のまんま死ぬんかい!っていうのと、あとこれは、変身する前は主人公が家族を支えていたのに、最終的には主人公がいなくなって家族はハッピー!みたいな終わり方をしていたのが、なかなかシビアというかね、残酷な感じがして・・・でも、読んで面白かったのは面白かったです。

     

    Haさん

    めちゃめちゃ久しぶりに読んで、昔・・・若い時は「なんて酷い家族なんだ!」って思って、最後に「この娘にお婿さんを」みたいな、なんてことを!って思ったんですけど、例えばNjさんがおっしゃったように、病気の方がいるとか、老人がとか認知症の方がいるご家庭とかで、こんな風に思うんかなあ・・・っていう感じがちょっとしたんですね。

    たまたまこの間、「認知症」っていう言葉を初めて使った・・・「痴呆症」を「認知症」って変えたお医者さんのドキュメントがあって、その方が認知症になったんですよ。
    そのお医者さんが、その姿を撮影して欲しい、役に立って欲しい、ってことで、23分のダイジェスト版だったんですけど、「認知症になられて何が違いますか?」という質問に「なんにも変わらない」っておっしゃったんですよね。「私としてはなんにも変わらない」、そして後でインタビュアーの方が「本人は変わらないけど、周りの人が変わるんだなあ」ってことをおっしゃっていて、それがこれかな・・・と思って読んだんですよね。

    結局この人って、こんなに酷い扱いされてるのに、全く恨んでないでしょう?

    最後の最後まで、死ぬことがみんなの幸せなんだ、みたいな深い感謝をもって死んでるんで、神様みたいな人だなあって思って。この人神じゃない?って思って。

    なので、すごい人なんですけど・・・なんか、うーん、ちょっと不条理っていったら不条理なんですけど、何も変わらずに、自分は変わってないんですけど、何かの障がいを得たりすると、周りはこんな風に変わるんだなあ・・・って。

    でも、自分の中では希望をもって、最後までいくっていう、信仰的な話なのかなあ・・・って、ちょっとだけ思いました。

     

    Hさん

    私は最初は朝起きたら虫になってた訳なんだけど、虫になりたいからなったんだろうな・・ってちょっと思ったんだよね。

    っていうのも、要するに、仕事に行きたくないとか、学校に行きたくないっていうのも近いのかもしれないけど、自分がしたくない、なんかもうとっても何かしたくないから、虫になればもうしなくて済む、誰に対しても虫だからできないという正当な理由付けができるから、この小説の中では虫ってことになっているんだけど、仕事にもうどうしても行きたくないとか、今まで家族の借金を返すために少しずつ少しずつ無理をして、たまりにたまっていた何かが、虫になればもうそれをしなくて済む・・・。

    例えば学校に行きたくないとか、そいうのも虫になれば正当な理由付けが、誰でも「じゃあ仕方がない」、自分に対しても「行こうとしてるんだけど虫になっているから体の自由がきかなくて仕方がない」、で、家族ももう「行くも行かないも、もうその部屋にいるしかない」っていう・・・。

    そもそもは、自分の願望で、なりたくてなったのかなあ・・・っていう気が最初の方はしていて、やっぱりそこを通りこしたら可哀そうで、っていうのも、自分で願って虫になったにも関わらず、なんとか今の状況を抜け出そうと試みたりもがいたり、色んな事をしてなんとか打開しようとするあたりが、なんとも可哀そうな感じがしました。

    で、確かに障がい者とか、体がきかない高齢者とか、色んな見方があるとは思うんだけど、ちょっと今風にいえば「ひきこもり」的な感じなのかなあ・・・っていう風に思ったかなあ。

    で、なんかちょっと分かるっていうか、ただ何かをしたくないとか、どこかに行きたくないっていったんでは、やはり自分にも言い訳がたたないし、、周りも許してくれない・・・けど、虫になってしまえばもう「できないってことにすごく説得力がある」っていうか、誰しも何かをしたくない時ってあると思うんだけど、その時の対処法として、この人は虫になっちゃった・・・まあ、人それぞれいろんな対処法があると思うんだけど、ちょっと私は「ひきこもり」に似てるかなあ・・・って思いました。

     

    Nam

    何を言っていいんだかいまひとつ分からないのと、細かい部分をと思うとやっぱりこういう「翻訳もの」ってどこまでこの文章にこだわって読み込んでいいのかがちょっと戸惑ってしまって、名前からして私が読んだものでは「グレーゴル」なんですよ。
    この高橋さんだけがそうで、割と他の翻訳では「グレゴール」でしょ?

    あと、翻訳の話になっちゃうんだけど、この高橋さんがこれをだしたのが昭和27年、だから1952年なんだけど、けっこう今まで読んできた太宰とか、その辺の言葉の古さがあるんですよ、この訳。

    例えば、「ひっそり」のことを「ひっそり」に「閑散の閑」をつけて「ひっそり閑」とか、「アーモンド」のことを「巴旦杏(はたんきょう)」とか書いたり、そういう言葉の古さと、独特の堅苦しさが文章にあって、ちょっと読みやすい文ではなかったんだよ、砕けた所が無くて。

    でも、その分、堅苦しいからこその滑稽味みたいなものはこれにはあって、もちろん全然悪い訳ではなく、いい訳だと思うんだけど、私は本当に翻訳ものって「どこまで信じていいの?この文章を」って思っちゃうんだよね。

    これ、もともとはドイツ語だよね?書かれたのは。

    で、他の人の翻訳はどうなんだろう?と思って、ちょっと見てみたら、多和田葉子さんが最近翻訳してて、そうなると、この高橋さんのとは全くの別物の小説のような訳になってるみたいなんだよね。

    で、まあ、これで読んだから、これで話をするんだけど・・・。

     

    私はやっぱり「虫!」(笑)

    虫にこだわちゃってて、前回のカフカの時にどんな虫かって話があって、蜘蛛だとか甲虫だとかゴキブリみたいなのとか天井を這えるような虫だとか・・・だから一体これは文章からどんな虫が浮かび上がってくるんだろうかと思ってみてたら、横向きに寝たいんだけど横向きになれないとかさ、お腹にかかっている布団が滑り落ちるようなお腹だとか、お腹が膨らんでて横向きに線がいくつもあるとか、手が細くて何本もあるとか・・・これね、後ろの解説にはムカデって書いてあるんだけど、私は最初の方はどうしても何かの甲虫、頭が小さくてお腹がでっかい「シデ虫」みたいな甲虫を思い浮かべて読んでたら、途中から部屋に入ったら方向転換したいのにそれがままならない、わちゃわちゃ手足が好き放題に動いて制御出来なくて方向転換がままならないとかなってて、そしたらもっと節足動物みたいに足が多いのかなとか・・・。

    結局、読んでて結論がでなかったの。これを読んだ印象では。

     

    で、お父さんにリンゴを投げられたらリンゴが背中にはまっちゃって(笑)、結局死ぬまでそのリンゴが取れなかった。

    となると、私の思った「シデ虫」ではたぶんない?

    どういう虫をカフカがイメージしてたのかは分からないけど、私は最後まで結論が出なかった。

    「背中にリンゴがはまる虫?」(笑)

     

    Hさん

    そこが、私もどんな状態なのかなあって(笑)

     

    Nam

    思うよね?(笑)

    しかも、哀しいことに最後までリンゴが取れなくって、死ぬときも背中にリンゴがさ・・・干からびたリンゴが背中に埋まったまんま、そのリンゴが、部屋を掃除してもらえないからそこらじゅうがほこりとか髪の毛とかですごいことになってて、ほこりをかぶって、干からびたリンゴを背中に埋め込んだまんま、体が動かなくなって死んでいく・・・っていう、こんな哀しい死に方があるのかっていう死に方するんだよね。

    どの解説を読んでも、父親が投げつけたリンゴが原因で、その傷が炎症を起こして衰弱して死んでいくって書いてある。

    にしては、父親は「力なく放っている」んだよね。   

     

    Hさん

    殺す意図はなかったんだろうけどね。

     

    Nam

    彼はさ、虫になるじゃん?

    で、背中が鎧の方に固くって、虫になったんだからさ、そこから「俺のターン」ってなってもいいじゃん?

    「俺、強靭な虫の体手に入れたよ」って。

    だけどさ、彼の虫の体はものすごく傷つきやすいんだよ。
    しかも、虫の体を全く制御出来なくて、最初は声をだしてしゃべれるんだけど、声をだしたらピーピーいう声がダブルでかぶさってきて、次の日くらいにはもうしゃべれなくなっていく。
    で、ドアにぶつけては、足が傷つき、もうやたら弱いんだよ。でっかい虫の割には。

    なんとも哀しい虫なんだよね。

     

    あのさ、「虫の目」っていうカメラがあって、色んな虫を撮影して、虫を等身大パネルにして展示会する写真家の人がいる。

    ところがさ、バッタでもカマキリでもなんでも、虫を巨大化した瞬間に、虫ってものすごく強靭で恐ろしいものになるのよ、虫って。

    「あー、指先サイズで良かった」って思うんだけど、こんだけ巨大だったら、カマキリのカマひとつで、人間なんてざっくりやられちゃう。

    だから、本来は大きくなったら虫の体って本当に強靭なものになるはずなんだよ。

    なのにさ、このザムザときたら、本当に哀しいくらいに脆弱な虫?(笑)

    なんかさ、虫好きな私からしたら「なんなんだよ、これ!」と思って。
    せっかくおっきな虫になったのに、この傷つきやすさときたら・・・。

     

    で、これさ、カフカを感じるよね。このザムザに。

    この家ってさ、ザムザがいたから経済が回ってるっていう稼ぎ頭で、本当に辛い仕事を必死で頑張って、でも家族は最初は給料を出したら感謝して喜んでいたのが、だんだんと有難みも薄れて、家族は感謝することもなくなっていた、そんな中で必死に働いてたんだよねザムザは、そして妹を音楽学校にやってやろう、もうちょっと自分が頑張ればそれも夢ではない、クリスマスにそう言って喜ばせてやろうと思っていて、それを励みに涙ぐましいほど家族のために尽くしてきた男が、いざ虫になって金稼げなくなった瞬間のこの家族の冷たさ!(笑)

     

    Hさん

    色んなことがね、感謝じゃなくて段々と当たり前のことになってきてしまうっていうのは、家族にありがちなことかなあ。

     

    Nam

    にしてもさ、凄い扱い(笑)

    妹も最初は好物の「ミルクパン粥」を作って、ザムザは虫だから食べられないんだけど、そしたら次は色んなものを置いてみて「お兄ちゃん何なら食べられるの?」ってやってたのが、そのうちに食べれような食べられなかろうが、何でもいいようなものを足で部屋に蹴りこんでる。

    口をつけなくても気にもしないで箒で吐き出して片付けるって、食べ物を与えるような態度じゃなくなっていく。

     

    ほんとにさ、このザムザの哀しさ・・・。

     

    なのに、他の人も言ったように、もうちょっと虫になったらショックを受けたっていいようなもんなんだけど、意外とさ、自分が虫になったこと自体にはそんなに衝撃を受けてないよね、この話の中でさ。

    ただ、最初は虫になったとはいいながら、6時半だっけ?電車に乗れなかっらから、次の電車には乗らなくっちゃとか、普通ありえないじゃん、自分が巨大な虫になったら、なのに「はい、じゃあ次の電車に乗って仕事場に行こう」とか、思ってるところがすごく面白いんだよね。

     

    Hさん

    そこがまあ、「仕事人間」的なところなのかなあ。

     

    Nam

    不思議な面白さがあるよね?

    なんかさ、滑稽なところも沢山あるんだけども、やっぱりさ、この悲哀、ザムザの悲哀が胸に迫ってくる・・・(笑)

    でも、最後、本人はそんなに辛くもなく、なんか当たり前のように、安寧の中に行くように死んでいくんだよね。

     

    Hさん

    結局、家族の為ばかりに生きて、自分を生きていないような感じは少しするかなあ。

     

    Nam

    そうなんだよね。

    でも、面白いのはさ。

    壁に女の人の絵を飾っていて、雑誌から切り抜いた肖像画を、わざわざ手作りの素敵な額に入れてさ、飾ってるじゃん。

    でさ、家族がさ、うちの中の色んなものを、家具とかをさ、ザムザから奪い取ろうとした時にさ、もうさ、「この絵だけは持っていかせん!」ってしがみつくじゃん。

     

    Njさん

    そここだわるか(笑)

     

    Hさん

    そこだけは自分を出したよね!(笑)

     

    Njさん

    そこイレギュラーな感じがした(笑)

     

    Nam

    雑誌から切り抜いた絵だから、たぶんたいした絵じゃないんだけど、なんかザムザにとっては琴線に触れうような女の人だったんだよね。その女の人に執着するところ、なんか哀しいよね。

    なんかちょっと好きだった風な女の人がいたようなことが書いてあるんだけど、もう虫になっちゃったらその人との親交も望めない・・・そんな状況の中、好みの女の人に執着して、虫になった彼がしがみついてるとか、滑稽なような哀しいような。何とも言えない。

     

    Hさん

    虫になってる間にね、自分が虫になったことをに対して悲嘆にくれるというよりも、やっぱり家族の心配ばかりしているところが、自分のもうちょっとね・・・どうなんだろうね。

     

    Nam

    妹のバイオリン。妹が内職しなきゃいけなくなって、バイオリン弾くこともなくなっていたのが、ある日下宿人3人置くことになって、その下宿人の前で弾くじゃない。でも、そのバイオリンの音色がどんなに素晴らしいか分かっているのはザムザだけ、下宿人はもう飽き飽きしちゃって早く終わらないかなと煙草吸ったりしてるのに、ザムザはさ、妹のバイオリンに心打たれて、思わず這い出して、部屋に行くとことかも切ないよね。

     

    まとまりもつかないけど、なんか美しいような、哀しいような・・・でも、死ぬところはさ、哀しいと言えば哀しいんだけど、そんなに苦しまずにね、本人もなんかもう納得した感じで。

     

    Saさん

    なんか家族が、段々逞しくなっていくじゃない?
    お父さんなんて、最初は全然グレゴールが働いていたころは動くことも出来なかったような感じだったのに元気になっていく、それちょっとグレゴールにとっては寂しかったのかなあって感じる。

    自分の存在意義がなくなってきたっていうか。

     

    Hさん

    ちょっと家族の為に生き過ぎちゃってるのかなあ。

     

    Saさん

    そう、お互いに依存し合っていたって感じだよね。

     

    Nam

    これさ、白髪のお手伝いの婆さんみたいな人出てくるじゃん(笑)

     

    Kさん

    その人めっちゃ好きです。いやあ、タフでいいわ(笑)

     

    Nam

    なんか「馬糞虫ちゃん」とか書いてあるんだけど、グレゴールのこと全然怖がらずに、からかってさ。
    「はいはい、こっちにおいで、馬糞虫ちゃん」とか言って、この婆さんね(笑)

     

    Kさん

    いやあ・・・いいキャラですわ(笑)

     

    Nam

    最後、すごくない?(笑)

    「もう死体のことは心配しないで、あたし片付けたから(ハート)」みたいにさ。

    私さ、等身大の虫の死骸をどうやって片付けたんだろうって思って(笑)

    もうさ、痩せちゃってさ、食べ物食べてないから、死んだ時は干からびたみたいにぺっちゃんこになってたじゃん。

    虫ってさ?ご飯食べないと痩せるのかな?あんまり痩せた虫って見たことないんだけど。

     

    Kさん

    確かに(笑)

     

    Hさん

    でもさ、繊細なグレゴールが死んで、逞しくなった家族と、そのお婆さんはしっかり生き延びてるっていう(笑)

     

    Nam

    そうなんだよね、妹しかもグレゴールの死体を見たら「まあ、なんて痩せてるんでしょう!確かにずいぶん長いこと食べ物食べてなかったからね」みたいなこと言っちゃって。

     

    Hさん

    なんかほんと、悲哀というか、何ともいえないね。

     

    Nam

    意外とこのお母さん?
    ザムザみると「きゃー!」とか言って失神しちゃうんだけど、でも意外とちょっとやっぱり母親だから、ちょっとだけ優しいんだよね。

     

    Hさん

    一番優しい。

     

    Nam

    自分の息子が虫になったことを受け止められてるのか、やっぱりそこは切り離して、今までの記憶の息子だけを見ているのか、そこは分からないけれども、少なくともちょっと優しいし、お父さんをとめて命乞いをしたり、お医者を呼ぼうとしたり、お母さんだけはちょっと優しい。

    でも、グレゴールを見ると失神しちゃうんだけど(笑)

     

    Hさん

    家具をどかすのを反対したりね。戻った時のことを考えて。

    なんか変身するって、なんかあるのかな?

    結局虫に変身して、タイトルも「変身」ってついてるんだけど、変身するってなんかのメタファーっていうか、全然しらないんだけど、流れをたどって行ったら変身の系譜ってあるのかな?

     

    Nam

    メタモルフォーゼものって、絶対あるよね?

     

    Hさん

    何か象徴みたいなものとかあるんですかね?

     

    Nam

    どうかな・・・でも変身願望っていうのは、誰にでもあるものだかな、とは思うんだよね。

     

    Kさん

    変身したいですか?みなさん

     

    (ここから個別の変身願望の話・・・にはならなくて、ハロウィンとか戦隊ものとかプリキュアとかの話に)

     

    Hさん

    何故この人は虫になって・・・?だから虫になれば社会的なことは何もしなくてすむ・・・。

     

    Njさん

    何故虫なのかなあ・・・って・・・。

     

    Nam

    どうなんだろうねえ・・・でも、滑稽な話として書いた部分もあるらしいんだよね。

    だからその・・・「人間」がなるときに・・・ちょっと分かんないけどね・・・じゃあ、「人間」が何かになる時に何になるかって・・・。

    例えばさ、この辺に(頭の上めいっぱいを手で示す)神がいるとしたら、こっちの辺に(下の方めいっぱいを手で示す)虫。

    だから、人間が真ん中辺にいるとしたら、落差が、こっち方向か(上)こっち方向か(下)で、もっともこっち方向で(下側)で変えて面白いというか意外性が強いものって思って虫なんじゃないの?

    だから、虫でも、これってカブトムシじゃないもんね。ヘラクレスオオカブトとかじゃないじゃん。

    「害虫」?

    なんか人に忌み嫌われる虫?っていう感じ?

     

    で、なんかこれ、私うろ覚えなんだけど、多和田葉子さんの翻訳だと「生贄にさえできないような汚れている生き物である虫」そういう意味に訳してある。

    この言語の「虫」に該当する部分は、通常「害虫」とか翻訳するみたいなんだけど、別の意味で「生贄にできないもの」つまり「神にささげるに値しないもの」みたいな意味があるみたいで、それを見つけて翻訳しているみたいなんだけどね。

     だから、「虫(原語)」をどう翻訳するのかは分かんないんだけど、やっぱり「いいものではない」よね。

     

    Kさん

    そう聞くとやっぱり「役立たず」な意味合いが強いのかなって気がします。

     

    Hさん

    一気に生産性が全然ない人になっちゃってるよね。

    だけど、その人が、役立たずみたいになっちゃってるけど、そこをもちろんそのまま言いたかったんじゃないんだろうけど。

     

    Nam

    だから、「害虫」以外には翻訳を読むと「毒虫」って訳してる人もいて、でも、毒虫っていると刺されて痛い虫とか、ムカデとかハチとか蠍とかタランチュラとか、そういうものを思っちゃうんだけど、どうもその、そういう「強さのある虫」じゃないっぽい?

    毒で何かと戦う力を持っている虫ではない感じ。

    だから、何とも戦えない、何の力も持ってない、ただ大きいだけで、役にも立たないし、傷つきやすくって、すぐあちこちダメになる。しかもお腹に、白いつぶつぶができちゃってて、皮膚病なのかダニにたかられてるのか分からないけど、もう最初からダメになっちゃってるんだよね、この虫の体。

    ものすごい哀しい虫。

     

    Hさん

    さっき言ってたみたいに、一番神様とか真逆な位置にある繊細で弱くてみんなから忌み嫌われている虫が、結局は家族を逞しくして、妹も逞しくなり、生き生きとした家族に再生したとしたら、一番下にいた虫が、Haさんが言ったみたいにひっくり返って神様になってた、っていう・・・ことに受け取れる?

     

    Nam

    でも、どうだろう、この逞しくなった家族好き?(笑)

     

    Kさん

    どうだろう、でも主人公に依存してるよりは好きかもしれないです(笑)

     

    Hさん

    私も。

     

    Nam

    これ、たぶん意見が分かれるところだと思うんだけど。

     

    Njさん

    僕はなんか成長した家族だなって。

     

    Hさん

    以前よりは、自分たちで稼いで、自分たちで生活して、自分の足で立ってる感じはする。

     

    Njさん

    「変身」って、ある意味家族の変身とかかも。

    最後の方でさ、「娘がこの日ごろ顔色を悪くしたほどの心配苦労にもかかわらず、美しい豊麗な女に成長しているのにふたりはほとんど同時に気がついた」ってね、突然気が付くんだよね。

     

    Hさん

    やっぱ自立した感じが前よりする。

     

    Nam

    だからこの・・・いつ終わるともしれない面倒を妹は引き受けてやってた訳じゃん。ひょっとしたら一生だったかもしれない、先が見えないんだよね、こういう「もの」が家にいると(笑)

     

    Hさん

    まさにNjくんが言っていたような、西先生が「介護文学」っていってたんだけど。

     

    Nam

    ほんとに、先の見えない世話だからさ、途中で嫌になったって、責められない部分もある・・・。
    で、それを潜り抜けてさ?ほんとに最後、晴れ晴れとこの話は終わってるよね?(笑)

    でさ、最後にNjくんが言ってくれたところでさ、辛い思いをして面倒見てきてさ、今は内職をして暮らしている娘が、はっと気が付いたら美しい豊麗な女に変身しててさ、両親が「なんとうちの娘は美しい女になったことだろう」って気が付いてさ、前にHaさんが言ってたけど、娘に婿を取らせてやろうと・・・。

    いきなり今までの話と雰囲気が変わってさ、前にHaさんがここのこと引用してくれたと思うけど、「若々しい手足をぐっと伸ばした」らさ、「ザムザ夫妻の目には、彼らの新しい夢とよき意図の確証にように映った」と。

     

    娘が健康的で美しく、生き生きとしているその若さと美しさが、夫婦にとってはもう福音のように、新しい希望のように映っている・・・っていうもうこれさ、教会の鐘が「リンゴーン♪」って鳴り響きそうな(笑)

     

    Njさん

    ね、光がさしてね?

     

    Nam

    光がさして、ハレルヤ!みたいな感じで終わってるよね。

     

    Hさん

    ただ、その少し、何ページか前にはさ?

    晴れ晴れとしてるんだけど、いきなり晴れ晴れとした訳ではなくて、「ザムザ夫人は悲しげな微笑を浮かべていた」とかね、「みんな少し泣いた後があった」とかあるんで、そこの段階を経て、晴れ晴れとしたってところはあるんだろうけど。

     

    Nam

    でもさ、みんなでドアの向こうでちょっとだけ泣いてさ?

    でも、出てきたらさ?

    「死体は片付けときました(ハート)」ってあの婆さんが(笑)

    もうさ、うずうずしてるじゃん、言いたくてさ?

     

    Kさん

    うーん、そういうとこも好きやわあ(笑)

     

    Nam

    ね?いいよね?(笑)

    薄笑いを浮かべて戸口に立ってさ、この一家にすばらしいことを告げてやりたいと、その素晴らしいことって何かっていったら・・・「や、あの死体、片付けといたんで。あの汚い虫の死骸、あたし片付けときました」って言いたくてうずうずしてる(笑)

     

    で、それを説明したらさ?

     

    結局、死にました、ちょっと泣きました、でも干からびた死体は片付けました、さっぱりしました・・・と。

    そしたら妹は美しい女になっていましたって・・・。

    ほんとにさ、舞台が転換したみたいにさ、ここで「ケリ」がついちゃってさ、この一家は新しい希望を得て・・・っていう話だよね・・・。

     

    Hさん

    なんかもしかしたら、人が死ぬことって、悲しいことだけじゃないのかもしれないね。

     

    Kさん

    まあ、なんか、次の段階っていう感じで、今の問題が一回終わって・・・っていう気持ちにはなるかなと思いました。

     

    Nam

    これはまさにそうだよね。

    しかもザムザは「やっかいもの」だった訳じゃん、「どう扱っていいのか分からないもの」になっちゃってた。何言ってるのか分かんないし。

    でも、そのやっかいものが片付いた。

     

    Hさん

    確かに、次のステージに移るみたいな意味もあるのかなあ。

     

    Njさん

    やっぱり、家族だったら次に行かざるを得ないっていうかね。

    それがしょうがないというか、健康な、健全なあり方というか。

     

    Kさん

    結局はこの家族は、それまではあんまりぱっとしなかったのに、息子が虫になったことをきっかけに、ある程度の地位とかも得た訳じゃないですか。社会的立場みたいなのも、ってなったら、ますますやっかいものっていうか「こいつがいなければ」感がでてくるんじゃないかと思うですけど・・・。

    今までそいつに養ってもらってたんだよ、って思いますけどね。

     

    Nam

    そこが哀しいんだよね。

     

    Hさん

    ただ、養ってもらっていたことって、割とすぐ忘れちゃうかもしれない(笑)

    例えば自分たちだってさ、一時期は親に養ってもらってた訳じゃない?でも、家族がゆえにそれってやっぱり忘れちゃうかも(笑)

     

    Nam

    これ、何が哀しいってさ、グレゴールはほんとに、色んなことを計画してたんだよね、自分なりに家族に対してさ。計画して、頑張って、家族の為に、家族の為にって、ほんとに色んな計画があったんだよ。

    でもさ、それが独り相撲(笑)

     

    Hさん

    為にと言いながら、為になってなかったのかもしれない。

    家族の為に思って私は頑張ってきました、っていっても、実は為になってなかった部分もあったんだと思う。

     

    Saさん

    ひとりよがりだった。

     

    Njさん

    ある意味、自分の為にやってたみたいな部分もあったみたいなね。

     

    Nam

    でもさ・・・伝わってない。たぶん「グレゴールの思い」が。

    そこが哀しいと思うんだよ、私。

    一生懸命一生懸命やってきて、妹を音楽学校にやってやろうと思って、やったら喜ぶだろうと思って・・・「家族を喜ばせよう」と思ってる彼の気持ちが、全く通じてないっていうのが、とってもグレゴールの哀しいところ。

     

    Hさん

    ただ、親子関係で良くあると思うんだけど、「頼んでは無い」んだよね(笑)

     

    Kさん

    よかれと思ってやってはくれているんですよね(笑)

     

    Hさん

    妹の為を思って色々やってるんだけど、妹もそれを頼んではないから、そこがなんというか、よくある「為を思って」っていうのがひとりよがりなところもあったのかもしれない。

     

    Nam

    これさ、「季節のない街」っていうドラマのあのさあ・・・。

     

    Saさん

    私もね、すごい思った。

     

    (「季節のない街」は、宮藤勘九郎の脚本のドラマ。山本周五郎原作。黒沢明の映画「どですかでん」のリメイク。そこにでてくる母親を思って懸命に金を貯めようと頑張る次男が、母親には全くその思いが通じなくて、むしろ嫌われてどうしようもなく辛くせつない思いをするという回があって、その次男がザムザとオーバーラップするという話)

     

    Saさん

    そんな風で、言葉って大事なのかもしれない。

     

    Nam

    グレゴールがさ、2日目くらいにしゃべれなくなっちゃうじゃない?

    そこが哀しいんだよ。

    だから、頭の中で計画してたことがあって、家族に対する思いはあるんだけど、もうそれを伝えるすべがないっていう。

    だから妹を音楽学校にやりたかったんだよ、きっと喜んだはずでしょう?っと、そういう風に思ってたよ、って思っても、もう二度と伝えられない。

    そこがとっても哀しいんだ。

     

    Saさん

    なんか、クリスマスに言おうとしてたんだよね?

    で、「クリスマスはもう過ぎてしまった」みたいなのが・・・。

     

    Kさん

    そうでしたね、あれせつねえ・・・。

     

    Hさん

    あとその、「お母さんお母さん」って、やっとお母さんに会えると思ったシーンもあったよね。やっと会えると思ったんだけど、会えたらけっこう邪険にされたような。

    母親に会うという望みが実現するんだけど、お母さんはそうでもなかったみたいな。

     

    Njさん

    お母さんなんかびっくりしちゃう。

     

    Nam

    グレゴールはさ、声も奪われるんだけど、目も奪われちゃうでしょ?

    視力。

    だから、窓にもたれて外を見てたのにさ、もう目が見えなくなってるから、今まで見れた景色ももう何も見えない。

    だから、視力も無い、言葉も発せられないっていう状態の中で、傷つきやすくてすぐ痛む体、それがさ、最後に耳は聞こえるから、妹のバイオリンだけは彼の心を揺り動かしたんだよね。

    それで、思わず知らず、その部屋に向かっていざりよっていってしまった。

    で、出ていったものだから、最後は死に向かうようなことになってしまうんだけど。

    彼の唯一残っていた人間らしい心が妹のバイオリンで、そのバイオリンの良さを分かっているのは彼だけだったけど、それも妹には分からない。

    だから、彼は何も伝えられない・・・っていう、哀しさがあるんだよね。

     

    Kさん

    話ちょっと変わっちゃうかもしれないんですけど、妹ってほんとにバイオリン上手だったんですかね?

     

    Nam

    そこはそうでもないと思う(笑)

     

    Kさん

    なんか音楽学校に入れるって話しも主人公が言ってるだけだし、妹がそれを望んでたかは分かんないじゃないですか。

     

    Hさん

    望んでるとは書いてないよね。

     

    Kさん

    書いてないんですよ。泊ってる客も別にぱっとしない感じのリアクションだし、実は兄のひいき目で、ちょっと良さげに聞こえてただけなんじゃないかって説が(笑)

     

    Hさん

    妹もその音楽大学に行きたがっていたとは書いてはない・・・。

     

    Kさん

    そうそうそうそう。実は、下手の横好き的な感じでそんなに・・・だったのかなっていうのは、ちょっと思いました。

     

    Hさん

    そんなに裕福な家ではないからね、バイオリンを良いレッスンに通ってしっかりやっているという感じではないよね。

     

    Kさん

    そう、たぶん自己流じゃないですけど、自分で弾けるようになってる感じ、っぽかったので・・・。ってなったら、やっぱり・・・話し合いすれば良かったのに、って思いました(笑)

    人間関係って、やっぱそうなんだな・・・って思いました。

     

    みんな

    確かにね・・・。

     

    Nam

    でもこれ、ちょっと前っていうか、結構前じゃん、書かれたの。

    だから、親子関係っていうのがさ、たぶん今とかなり違う時代(執筆は1912年)だと思うんだよ。

    父親の権威主義がまかり通るような時代、そういう時代の話だし、そういう家族の中でコミュニケーションをとるっていう考え自体が無い時代。

     

    Kさん

    お父さんの言うことは絶対的な?

     

    Nam

    そうそうそう。たぶんね?

    だから、もうちょっと前になって、ヴィクトリア朝時代になっちゃうと、「子供に人権は無い」っていう時代だってあるじゃん。

    だからまあ、時代ももちろんある・・・よね?

    でもこれ、Kさんとかどうか分かんないけど、私くらいの年代だと、まあ、こういう家族関係っていうのは、とっても良く分かる。

    その、フラットじゃないんだよ、全然。家の中に、格差がある(笑)

    あと、「役割分担」が家族の中にとてもはっきりある・・・とかね。だから、お母さんは母親役で、お父さんは父親っていう役でっていう、で、ここは、父親がもう稼げなくなって借金してるから、長男がその役割を代替わりしてる。

     

    Njさん

    当然やるって感じでね。

     

    Kさん

    そう考えると、しょうがない部分もやっぱりあるんですかね?

    お父さんらしい役割を、主人公もやってたって考えると。

     

    Nam

    そうだと思う。

     

    Hさん

    だけども、時代の変わり目まではなくても、それだと家族はこうなるよ・・・じゃないけど、ひとつの結果というか、あれなのかしら。

     

    Njさん

    お父さんも元気になっていって、「やればできるじゃない」ってねえ・・・。

    グレーゴルは思ってるかもしれない(笑)

     

    Hさん

    ちょっと見方を変えると、確かに家のなかに「やっかいもの」がいれば、「役立たず」のようだけど、やっぱりそこを中心に家族が変われるっていうのはあるのかなあ・・・って。

     

    Nam

    だから、異端のものが家族の中にいるから、その周りは団結していくっていう・・・。

    当然ね?

    で、ドアを閉めてひそひそと、家族で彼のことを話すようになる、っていう(笑)

    虫になった彼に皆の視線が行くことで、横が連帯しちゃうっていう。

     

    Hさん

    現状を打開しないといけないから、家族同士で話し合ってね・・・。こう一々どう打開するかって話し合ってね・・・。話し合いをしないといけないから、前よりも話をするようになったのかもしれないね。

     

    Nam

    なんかさ、生産的な話をしてるっていうよりはさ、なんか「噂話」的な?

    「起きてるよ」とか「どうすんのよ」みたいな。

     

    Hさん

    例えばもし家の中にすごく体の不自由なお年寄りがいたとしたら、やっぱり残ってる家族は、対等な関係で協力しあわないと、生活が成り立っていかないから、上下関係じゃなくて、協力関係で進んでいかないとね。

     

    Kさん

    喧嘩してる場合じゃないみたいになりますよね?

     

    Nam

    でもさ、意外とそうでもないっていうかさ・・・そこが悲劇なんだよ(笑)

    見ない人間がでてきちゃうとかさ・・・?

    ここだと、妹が独りでその役割を背負うじゃない?そしていよいよ立ち行かなくなって、爆発しちゃうんだけど。

    ザムザの母親は母親でありながら、何の役割も果たさないじゃん?

    ましてや父親なんて、部屋から出てきたら追い払おうとするだけで、言葉をかけてやるでもなく、全く関わらないよね?

    で、妹だけが背中に役割を背負う。

    だから、決して、ザムザがいることに向かって、協力体制を取っている家族ではない・・・と思うんだけど、まあ、そんなもんだよね?って感じ。

     

    Hさん

    でも、追い出したりはしてないから・・・。

    家族それぞれの内面を描いてる文章ってないから、行動や行為は描いているけど、どんな気持ちだったかとは書いてないから、追い出しては無いから、家族ならではの少しの協力体制はあったのかな・・・って(笑)

     

    Njさん

    なんか家具を動かしたりね(笑)

    お父さんはなんか就職したりね。

     


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